白馬の王子様 木場勇治 ページ5
この世界が変わり始めたのはどれくらい前だろう。世界の支配者は人間からオルフェノクに変わった。そんな日常を送る中、今日、私は彼の誕生日を祝うデートだ。
「迎えに来たよ。」
『勇治くん!会いたかった。誕生日おめでとう。』
「ありがとう!…A、行こうか。」
私の住むマンションに迎えに来てくれたのは、彼氏の木場勇治くん。私がオルフェノクになって戸惑っていた時に助けてくれて、そこから仲良くなった。
「今日の服この前買ったやつでしょ。」
『そうだよ、覚えててくれたの?』
「当たり前でしょ、忘れるわけが無いよ。」
カジュアルにもキレイめにも着れる、ゴールドのラインが特徴的なグレーのワンピース。襟にはビーズがあしらわれている。
ゆく道に居るのはみんなオルフェノクばかりだ。見た目は人間の頃と変わりないのに、その空気は愚かな欲や自尊心に満ちていて気が狂いそうだ。
しかし、それもまた日常というもの、こんなの慣れた。
『私、勇治くんが居なくなったら生きていけないかも。』
「…どうしてそんな事?」
『だって、長田さんが言っていたの。人間の所に行ってるって、危ない目にはあってない?』
「…ははっ、危なくないよ。俺達はただ、人間とオルフェノクが共存できるようにしたいだけなんだ。」
『……そう。』
私が不安で眉間に皺を寄せると、彼ははにかんで笑い、頬をつついた。私はなんて言ってあげれば良かったんだろう。そこで会話が止まってしまった。
今日もまた勇治くんと会った。今日はなんだかいつも以上に明るく、待ち合わせ場所まで駆け足で来てくれた。
『勇治くんは白馬の王子様だね。』
「俺が?ちょっと照れるなぁ。」
『だってホースオルフェノクじゃん、ね?私の王子様!』
「あ、あぁ…そうだね。そうかも。」
そうだった、ごめん…。オルフェノクの話はしちゃダメだった。彼は人間として生きていきたいのに、ここで引き止めちゃダメだ。優しい彼は、いつまでオルフェノクを受け入れた私を見捨てずに居てくれるだろうか。
『ん、それこの前の。』
「そうだよ、よく気づいたね。」
それと言って指さしたのは、彼の手首に巻かれたブレスレット。私が誕生日プレゼントとして渡したものだった。
『私があげたのに、気づかないわけないじゃない?』
この複雑な世界で、彼の目を見て話していられるのはあと何回かな。できる限り、彼と居たい。私は彼の手を強く握って、デートの行く道をしっかり踏み込んだ。
−−−−−
end
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Akira_s2(プロフ) - あめだまさん» リクエストありがとうございます!剣崎くん承知しました☺️更新までしばらくお待ちください (5月6日 21時) (レス) id: 4fceb90968 (このIDを非表示/違反報告)
あめだま(プロフ) - 初めまして!コメント失礼します!仮面ライダー剣の剣崎一真って可能でしょうか? (5月6日 17時) (レス) id: 4eb730f803 (このIDを非表示/違反報告)
Akira_s2(プロフ) - 陽炎さん» 読んで頂きありがとうございました! (3月4日 22時) (レス) id: 4fceb90968 (このIDを非表示/違反報告)
陽炎 - 本当に素晴らしいお話をありがとうございます! (2月28日 15時) (レス) id: e05c80d031 (このIDを非表示/違反報告)
陽炎 - リクエストに答えて頂いてありがとうございました!! (2月28日 15時) (レス) @page19 id: e05c80d031 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Akira_s2 | 作成日時:2024年1月13日 23時