検索窓
今日:13 hit、昨日:29 hit、合計:5,853 hit

赤いマフラー 一文字隼人(シン) ページ3

お嬢さんにこの赤いマフラーを巻いてもらった。



洗脳が解けて思い出したことがある。


「あぁ、俺もマフラーを巻いたことがある。」

と。

涙を流すには十分すぎる出来事だ。




ジャーナリストという仕事は、たまに危険だ。そのせいで俺は彼女の身さえ危険に晒した。

ストーカー、そしてひき逃げ。Aは大怪我を負った。情けなかった。ペンで悪を捌きたいという正義感の反発した結果がこれだ。

それから、群れることを嫌うようになったんだな。

だからしばらく…一年以上彼女に会っていなかった。


彼女が暮らすマンションに立ち寄り、そのドアが空くのを待った。

『……隼人さん。』

もう自然消滅していてもおかしくないような距離感だったのに、彼女は何も変わらない。…いや、俺が変えさせてやれなかったのかも。

「Aごめんな…。ごめん。」

俺を見て泣き出し、次には胸に埋まった。


『マフラーね、使えなかったの。』

部屋の中もたいして変わらない。俺と撮った写真も、何度も寄り添いあったソファも、変わらずそこにある。

『貴方がそばに居ないことを、突きつけられるような気になって。』

「もう一度、巻いても…いいか?」

マフラーをプレゼントした日はまだ冬の始まりだった。でも今日はかなり冷える冬本番。

『うん…、お願いします。』

Aは隣の寝室から深い赤の毛糸のマフラーを持ってきた。毛玉などもなく、本当に使っていないことが分かる。

「俺な、今仮面ライダーになって戦ってる。」

『仮面ライダー?』

「…悪と戦う力を持つ者。俺はそう思ってる。」

『そう。貴方のやりたい事なら…応援する。』

「一緒に来てくれ、ライダーには赤いマフラーって決まってるらしい。」

俺は胸の内を明けて、そのマフラーを巻いた。やっぱりAに似合うな。今なら本郷も、政府の彼らも居る、もう二度と離れ離れで寂しい思いをさせたくなかった。

『隼人さんとならどこへでも行く。だから、もう…離れないで。』

「あぁ。約束する。」

マフラーを巻いたAは、部屋の中では暑そうに頬を赤らめて笑っている。この笑顔を毎日見れるのか、そう思うだけで心に蓄積されていた憂鬱は消えていった。

「これで心スッキリだ。」

−−−−−
end

ファイズ・パラダイス 予告→←本物の魔法使い 操真晴人



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (8 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
32人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

Akira_s2(プロフ) - あめだまさん» リクエストありがとうございます!剣崎くん承知しました☺️更新までしばらくお待ちください (5月6日 21時) (レス) id: 4fceb90968 (このIDを非表示/違反報告)
あめだま(プロフ) - 初めまして!コメント失礼します!仮面ライダー剣の剣崎一真って可能でしょうか? (5月6日 17時) (レス) id: 4eb730f803 (このIDを非表示/違反報告)
Akira_s2(プロフ) - 陽炎さん» 読んで頂きありがとうございました! (3月4日 22時) (レス) id: 4fceb90968 (このIDを非表示/違反報告)
陽炎 - 本当に素晴らしいお話をありがとうございます! (2月28日 15時) (レス) id: e05c80d031 (このIDを非表示/違反報告)
陽炎 - リクエストに答えて頂いてありがとうございました!! (2月28日 15時) (レス) @page19 id: e05c80d031 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Akira_s2 | 作成日時:2024年1月13日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。