赤いマフラー 一文字隼人(シン) ページ3
お嬢さんにこの赤いマフラーを巻いてもらった。
洗脳が解けて思い出したことがある。
「あぁ、俺もマフラーを巻いたことがある。」
と。
涙を流すには十分すぎる出来事だ。
ジャーナリストという仕事は、たまに危険だ。そのせいで俺は彼女の身さえ危険に晒した。
ストーカー、そしてひき逃げ。Aは大怪我を負った。情けなかった。ペンで悪を捌きたいという正義感の反発した結果がこれだ。
それから、群れることを嫌うようになったんだな。
だからしばらく…一年以上彼女に会っていなかった。
彼女が暮らすマンションに立ち寄り、そのドアが空くのを待った。
『……隼人さん。』
もう自然消滅していてもおかしくないような距離感だったのに、彼女は何も変わらない。…いや、俺が変えさせてやれなかったのかも。
「Aごめんな…。ごめん。」
俺を見て泣き出し、次には胸に埋まった。
『マフラーね、使えなかったの。』
部屋の中もたいして変わらない。俺と撮った写真も、何度も寄り添いあったソファも、変わらずそこにある。
『貴方がそばに居ないことを、突きつけられるような気になって。』
「もう一度、巻いても…いいか?」
マフラーをプレゼントした日はまだ冬の始まりだった。でも今日はかなり冷える冬本番。
『うん…、お願いします。』
Aは隣の寝室から深い赤の毛糸のマフラーを持ってきた。毛玉などもなく、本当に使っていないことが分かる。
「俺な、今仮面ライダーになって戦ってる。」
『仮面ライダー?』
「…悪と戦う力を持つ者。俺はそう思ってる。」
『そう。貴方のやりたい事なら…応援する。』
「一緒に来てくれ、ライダーには赤いマフラーって決まってるらしい。」
俺は胸の内を明けて、そのマフラーを巻いた。やっぱりAに似合うな。今なら本郷も、政府の彼らも居る、もう二度と離れ離れで寂しい思いをさせたくなかった。
『隼人さんとならどこへでも行く。だから、もう…離れないで。』
「あぁ。約束する。」
マフラーを巻いたAは、部屋の中では暑そうに頬を赤らめて笑っている。この笑顔を毎日見れるのか、そう思うだけで心に蓄積されていた憂鬱は消えていった。
「これで心スッキリだ。」
−−−−−
end
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Akira_s2(プロフ) - あめだまさん» リクエストありがとうございます!剣崎くん承知しました☺️更新までしばらくお待ちください (5月6日 21時) (レス) id: 4fceb90968 (このIDを非表示/違反報告)
あめだま(プロフ) - 初めまして!コメント失礼します!仮面ライダー剣の剣崎一真って可能でしょうか? (5月6日 17時) (レス) id: 4eb730f803 (このIDを非表示/違反報告)
Akira_s2(プロフ) - 陽炎さん» 読んで頂きありがとうございました! (3月4日 22時) (レス) id: 4fceb90968 (このIDを非表示/違反報告)
陽炎 - 本当に素晴らしいお話をありがとうございます! (2月28日 15時) (レス) id: e05c80d031 (このIDを非表示/違反報告)
陽炎 - リクエストに答えて頂いてありがとうございました!! (2月28日 15時) (レス) @page19 id: e05c80d031 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Akira_s2 | 作成日時:2024年1月13日 23時