リク おとぎ話 ジェラミー・ブラシエリ ページ18
今日はイシャバーナで仮面舞踏会が開かれる。神の怒りから十年が過ぎ、この城下はそんな情景を忘れさせるほど美しい。しかし、そんなイシャバーナにも影が落ちていた。
「貴女のような貧乏な娘が、フラピュタル城に足を踏み入れることが出来るとでもお思いで?」
「そんなドレスなんか、見苦しくて仕方がありませんわ!」
街の一角で口論が起きていた。きらびやかなドレスを身にまとい、高飛車な笑い声が怪しく響き渡る。
『これは弟と一緒に作った、たった一つのドレスなの!私はこれに誇りを持っているわ!』
例え笑われようとも胸を張り続ける彼女は、薄紅色のシンプルなドレスを身にまとっている。スカートの部分は様々な似た色の布が縫い合わせてあり、パッチワーク風のデザインになっていた。
「たった一つ?笑わせないでちょうだい!」
「私たちで直して差し上げましょう?」
『何っ、するの!』
クスクスと笑いながら二人は楽しそうに彼女のドレスを壊し、満足気に去って行った。
『あぁ…あっ……、うっ…。』
スカートはボロボロになり、袖はドレスから離れてしまった。悔しさと虚しさで涙が溢れて来る。
『これじゃあ、舞踏会に行けない…。』
「おっと、泣き声の正体はおまえさんかい。」
薄暗い路地裏から白いローブを羽織った謎の仮面が現れた。
『だ、誰?』
「今夜は仮面舞踏会、誰だっていいじゃないか。」
仮面の男は不敵に笑って、蜘蛛糸を彼女の腰にまきつけた。
『ちょっと、何よこれ。』
彼女は指先から蜘蛛糸が出たのを見て驚いたのも束の間、それがまさか腰に巻かれ混乱してしまった。
「ドレスを仕立て直してあげようと思ってね。おまえさんはシンデレラという話を知っているかい?」
『知っているわ、でも…。』
彼女だって子供では無いから分かっている。お話なら魔法使いがやってきてドレスを直してくれて、かぼちゃの馬車に乗ってお城へ行く。でもそんなのおとぎ話、空想の話なのだから。
「俺が魔法を使ってみせるさ。」
そう言うと仮面の男は糸を巧みに操り、元のドレスの布と合わせてふわふわのスカートを編み上げた。
『凄い…。』
「そうだろう?ほら、涙は拭いて、舞踏会に行こう。素敵なおまえさんをエスコートさせてくれ。」
かぼちゃの馬車はないが、彼の糸で空を飛んだ。涙はとうに涸れて彼女には笑顔が戻っていた。
とさ。
−−−−−
end
リク 闇に堕ちたら 大道克己→←リク きみに一番のドレスを ギラ・ハスティー
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Akira_s2(プロフ) - あめだまさん» リクエストありがとうございます!剣崎くん承知しました☺️更新までしばらくお待ちください (5月6日 21時) (レス) id: 4fceb90968 (このIDを非表示/違反報告)
あめだま(プロフ) - 初めまして!コメント失礼します!仮面ライダー剣の剣崎一真って可能でしょうか? (5月6日 17時) (レス) id: 4eb730f803 (このIDを非表示/違反報告)
Akira_s2(プロフ) - 陽炎さん» 読んで頂きありがとうございました! (3月4日 22時) (レス) id: 4fceb90968 (このIDを非表示/違反報告)
陽炎 - 本当に素晴らしいお話をありがとうございます! (2月28日 15時) (レス) id: e05c80d031 (このIDを非表示/違反報告)
陽炎 - リクエストに答えて頂いてありがとうございました!! (2月28日 15時) (レス) @page19 id: e05c80d031 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Akira_s2 | 作成日時:2024年1月13日 23時