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仮面舞踏会 乾巧 ページ13

童話のシンデレラは舞踏会に遅れてやって来て、王子様に見つけてもらう。

でも、この灰だらけの世界に、王子様などいるのだろうか。


『皆様、ようこそおいでくださいました。只今より仮面舞踏会を開催致します。』

ざわざわした空間に、少女の声はあまり通らない。それでも音楽を流せば自然とペアを組んで踊る人が現れる。誰も自分の事なんか見ていないのかもしれない、自分は到底シンデレラになる事など出来ないと、寂しく思えた。

「お嬢さん、一曲いかがですか。」

その時に、すっと手が差し伸べられた。彼は真っ白な装いで、純粋な瞳が少女を貫く。

『…喜んで。』

少女は憧れたシンデレラと同じ水色のドレスをヒラヒラとなびかせてお辞儀をするとその手を繋いだ。

「君、癒される声だ。」

『…ありがとう。』

誰にも届いていないと思い込んでいた声が、青年には届いていたのだ。少女は嬉しさが込み上げて微笑んだ。

「君は誰?」

『私は…この目を見て、感じて?』

ほとんどの人が、ダンスなんて今まで踊ったことはないけれど、それでも見よう見まねでステップを踏む。

「A。」

『え?』

「いや…、そんな気がしただけで。」

『Aだと言ったら?』

「名前を言うなんてルール違反だろ?」

『聞いたのは貴方よ?』

正体を探りあっては離れて、ただ見つめあいながら、ステップを踏む。ゆったりとした振る舞いが初対面だとは思えないもので、お互いにそれを感じていた。

『貴方は…巧?』

「残念だけど、違うよ。」

「俺は隆だよ。」

『そう、いい名前ね。』

舞踏会はまだ続く。しかし二人は互いの他に興味がなかった。会場を抜けて人々のざわめきが遠くから聞こえる場所まで少し歩いた。

『私には以前、大切な彼が居たの。』

「それが、巧?」

『そう。貴方が似てるから…違うのにね、ごめん。』

二人が肩を並べて座り、夜空を見上げる。青年は少女の手を取りある提案をした。今度は仮面を取り踊ろう、と。
それを承諾した少女は眼前のマスクのリボンを解いた。

「A。」

『…そうだよ。』

「俺は乾巧、思い出した。」

その顔と顔を合わせれば、昔の景色が甦ってくる。どうして記憶が無くなったのか分からないことだらけだが、今そこに居るのは本物の巧だ。王子様はいたのだ。

『…遅いって。』

もう一度目が合い、笑い合う。手が交わりステップを踏み出した。互いを見つけ合うシンデレラのストーリーもありかもしれない。

−−−−−
end

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Akira_s2(プロフ) - あめだまさん» リクエストありがとうございます!剣崎くん承知しました☺️更新までしばらくお待ちください (5月6日 21時) (レス) id: 4fceb90968 (このIDを非表示/違反報告)
あめだま(プロフ) - 初めまして!コメント失礼します!仮面ライダー剣の剣崎一真って可能でしょうか? (5月6日 17時) (レス) id: 4eb730f803 (このIDを非表示/違反報告)
Akira_s2(プロフ) - 陽炎さん» 読んで頂きありがとうございました! (3月4日 22時) (レス) id: 4fceb90968 (このIDを非表示/違反報告)
陽炎 - 本当に素晴らしいお話をありがとうございます! (2月28日 15時) (レス) id: e05c80d031 (このIDを非表示/違反報告)
陽炎 - リクエストに答えて頂いてありがとうございました!! (2月28日 15時) (レス) @page19 id: e05c80d031 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Akira_s2 | 作成日時:2024年1月13日 23時

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