全て灰に 北崎 ページ12
『結婚、北崎くんと…不思議な気分。』
「Aとっても綺麗だよ。」
『ありがとう。』
都会の片隅に忘れられた教会がひっそりと佇む。そこに忍び込んだ二人は、誰もいない結婚式をあげる。
真っ白なドレスより、灰色のドレスの方がしっくりするのは、オルフェノクと人間の、この奇妙な関係のせいだろう。
子供のころから独りぼっちだった彼を助けたのはAという少女だった。そして北崎がオルフェノクに覚醒してからも二人は共に居た。この世の中、人間などほとんど居ない世界で未だに人間であるAは、守ってもらえる北崎だけが頼りだ。二人は互いを必要とし、ある種の共依存に陥っていた。
「ボクは永遠の愛を、Aに誓います。…ほら、Aも言って。」
『私も…永遠の愛を北崎くんに誓います。』
手袋越しに手を繋ぐ。少しするとドレスにサラサラと灰になった手袋が落ちていく。
『触れてみたい。』
「だめだよ、まだ一緒にいて。」
『私達永遠なのよね。』
「そうだよ、死なないでね。…ボクの光。」
見つめ合う二人と静かな教会。外からの光はなく雨音がただ義務的に流れていく。
『北崎くん、誓のキスをしましょう。』
「んっ、なんで。」
北崎は訳の分からない行動に恐怖に陥った。
Aは北崎の頬を包んで離さないで、数センチの距離はゼロになった。
未知の体験に沸き立つ好奇心と、確実に目の前の人間が死ぬという虚無感が北崎を占領し、Aは既に灰になりかけている。
その間互いにずっと唇は離さなかった。Aの唇や指先がどんどん質感が変わっていく。
「分からない、つまらない。」
『これで永遠が完成する。』
その場にドレスだけが残り、Aは灰になった。その時が来るまでずっと笑顔のまま。
北崎は床に散らばる灰を手に掬った。サラサラと流れるだけで何も無い。殴っても、蹴っても、これ以上何をやっても灰は灰のままで何も変わらない。
「どうして…。なんで、分からない。分からない…。教えてよ…。」
一緒に生きようとした愛する人間は灰となり、何も光がなくなった。
「ふはは、ははっ、あははは!…人間なんてどうせ弱い生き物なんだ。ボクが最強だ!!」
笑うしかない。灰色のドレスも、静かな教会も灰にし尽くす。こんな場所なんて最初からなかったかのように、雷雨に晒されるまっさらな土地に、叫ぶオルフェノクだけが立ち尽くしていた。
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end
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Akira_s2(プロフ) - あめだまさん» リクエストありがとうございます!剣崎くん承知しました☺️更新までしばらくお待ちください (5月6日 21時) (レス) id: 4fceb90968 (このIDを非表示/違反報告)
あめだま(プロフ) - 初めまして!コメント失礼します!仮面ライダー剣の剣崎一真って可能でしょうか? (5月6日 17時) (レス) id: 4eb730f803 (このIDを非表示/違反報告)
Akira_s2(プロフ) - 陽炎さん» 読んで頂きありがとうございました! (3月4日 22時) (レス) id: 4fceb90968 (このIDを非表示/違反報告)
陽炎 - 本当に素晴らしいお話をありがとうございます! (2月28日 15時) (レス) id: e05c80d031 (このIDを非表示/違反報告)
陽炎 - リクエストに答えて頂いてありがとうございました!! (2月28日 15時) (レス) @page19 id: e05c80d031 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Akira_s2 | 作成日時:2024年1月13日 23時