幻想の刀剣と元監査官刀 ページ26
山姥切長義は縁側に腰をかける十六夜を見つけると2人分のお茶と茶菓子を持って歩み寄った。
この本丸は歴史上から失われた幻の刀剣・十六夜藤四郎を顕現している唯一の本丸であることは政府から聞いていた。
「(十六夜藤四郎に叛意はなし、しかし歴史を守ろうとする気概も見られず…)」
山姥切長義から見ても十六夜は人の歴史に関心があるようにはとても見えなかった。
「…十六夜、だったかな」
「…」
「よかったら、少し話をしても？」
俺と同じ色の目がゆっくりとこちらを向く。
…やがて興味が失せたと言わんばかりにその目は庭へと向けられてしまった。
「(好きにしろ、ということかな)」
長義は縁側に腰をかけた。
「…政府にいた頃から君の話は聞いていたよ」
歴史上から失われた幻の短刀・十六夜藤四郎。
「現存どころか、逸話としても君は名前が残っていない」
刀剣男士の中には確かに失われてしまったものも存在する。
しかし彼らは人々によって語り継がれてきた逸話によって現世につなぎ止められている。
それすらない、十六夜は…
「君は…どうやって現世につなぎ止められている？」
「…」
十六夜の表情に変化はない。
聞いているのかどうかすらわからない。
「……私を繋ぎ止めるは、神々の意志」
暫しの沈黙の後、十六夜は呟いた。
「彼の地に御座す八坂刀売神、洩矢神、後戸の神によって私は現に降り立っている」
つまりは、
「歴史を守る大義などではない、ただの神々の気まぐれによって私はここに在る」
「…き、みは…貴き方々の傍に侍ることを許されているという、ことかな」
出てきたビッグネームの数々に長義は顔を青くして言った。
「…でも、今の持ち主は人間」
「待って、理解が追いつかない」
混乱してしまった長義の姿に十六夜は僅かに表情を緩める。
「…心配は要らない」
「え、」
「顕現したのは、確かに私の意志ではない。…けど、」
私とて、貴方と同じ。
「俺と、同じ…？」
「歴史から消え去ろうとも、偽物の誹りを受けようとも」
私は人間を憎み、嫌うことができない。
｢貴方も、人に認識を歪められかけても人を嫌いになれない｣
だから、同じ。
「(……そうか、…同じ、か)」
この刀の傍では何の評価もない、ただ一振の刀であれる。
｢(だから、この刀の傍は……息がしやすいのか)｣
続く
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凛音 - 続きがめっちゃ気になります！頑張ってください！ (12月30日 11時) (
レス) @page26 id: 0943923905 (このIDを非表示/違反報告)
凛音 - これで終わりなのが寂しいです。 (9月22日 0時) (レス) @page25 id: 0943923905 (このIDを非表示/違反報告)
ハイキュー大好き！！(プロフ) - 続きがとても気になります！更新頑張ってください！！ (2021年2月9日 19時) (レス) id: 2d39102061 (このIDを非表示/違反報告)
乱 - 咲夜の奴ですね………とても面白いです！更新頑張ってください！ (2021年1月1日 3時) (レス) id: 0830061a27 (このIDを非表示/違反報告)
Qたん - 更新、頑張ってください！！！！！！！！ ( ´∀｀)bｸﾞｯ! (2018年12月17日 0時) (レス) id: 1e4cd3bd39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柚子ポン酢 | 作成日時：2015年9月15日 19時
