No.42 ページ46
消えていく。
黒い靄によって、Aちゃんの心音が。吐息が。
淡く滲んでは消えていく。
『ずっと、生きているのが後ろめたかったの』
口角は上がったまま、Aちゃんは言う。
その笑顔が何だか今は不気味に感じた。
『義理親にずっと虐待されてて、ある日我慢することを止めてしまったの。私が我慢しなかったせいで二人共死んだ。私が、殺した。
ある人が教えてくれた。《人に優しく弱い人間は死に、醜く愚かな人間は長らく生き延びる》って。
本当にその通りすぎるよ。優しい私の両親はすぐ死んじゃったけど、義理親(あの人)達は両親よりも永く生きたんだもの。
＿＿この世の真理がそうなら、本当にそれが正しいのならきっと、優しい善逸くんも死んでしまう』
物憂いで伏し目がちになったAは、悲しげにそう言った。
その後、にっこりと笑顔を取り繕って。
『私、善逸くんには死んで欲しくないの。どんな事があっても。善逸くんを殺してしまう不安要素は取り除いておきたい。だから醜く愚かな私を、善逸くんの手で殺して欲しい。私が善逸くんをいつか殺してしまわないために』
「…そ、そんな……Aちゃんを殺すなんて、俺ができるわけ…」
『知ってる。善逸くんのことは誰よりも分かってる自信がある。だからね』
『＿＿血鬼術 一華の風吹』
Aは両腕をいっぱいに広げて、まるで森全体に呼びかけるように言った。
その瞬間、風が強くなる。風の音で虫の音までかき消される。
山の色が。何も無かった山が紫色に染まる。
木が全て花になったかのように。
風に舞い、大量の花びらがくるくる回転する。
『…今夜だけ、この山に善逸くんを閉じ込めちゃった。こうすれば善逸くんが殺してくれるのが先か、日が昇って私が死ぬか、時間が決めてくれるから』
Aちゃんは俺に指を絡めてきた。
折れそうなくらい細くて、とても冷たいと思った。
『太陽に焼けてじわじわ死んでいくのって、鬼にとって一番苦しいことらしいから、できれば避けたいなぁ。
でも、優しい善逸くんがその選択を取らないことをちゃんと分かってる』
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黒月薔薇(プロフ) - もう、好き この一言しか出てこない 雰囲気壊すかもしれないけど、no.5の記憶力の差の差ってもしかしたらひらがなのさだったりしますかね 違ったらすみません 2人が幸せになることを祈ってます 更新頑張ったください (2020年11月8日 16時) (
レス) id: bf38792454 (このIDを非表示/違反報告)
キキ - うぅ涙が出てきました結月さんハンカチどうぞつ□ (2020年4月2日 20時) (レス) id: 62b0e1eed4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆら - 好き… (2020年3月27日 18時) (レス) id: ad9a4e05e9 (このIDを非表示/違反報告)
白蕀姫 - 超シリアスで、面白いです！更新頑張ってください！ (2020年3月18日 21時) (レス) id: d5d3062330 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ ルナ(プロフ) - し、しのぶさん！！カッコイイ！！！美しい！！ 心にしみる作品ですね！続き楽しみにしてます♪ (2020年3月12日 17時) (レス) id: 65c9fb08c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2020年2月17日 18時
