No.20 ページ23
ある日、傲慢な夫婦はAの両親の遺産を使い切ってしまった。
「あれだけ金で溢れていたのにどうしてすぐに減ってしまうの」
「全部、あのドブ鼠がいるせいだ、きっとそうだ」
「そうだ。幸美の形見のあの簪はきっと高く売れるわ。そうすればまた金が手に入る」
幸美はAの母の名前だ。
「さあ、ドブ鼠。その簪を寄越しな」
Aは義理父に羽交い締めにされる。
『嫌だ、やめてくださ、これはお母さんがお父さんに婚約の時もらった大切な…』
あれが無くなれば、私はただのドレイになってしまう。
あの両親の娘だったという形がなくなってしまう。
今まで必死に耐えてきた。
殴られても我慢した。暴言を吐かれ、罵られても我慢した。
煙草を腕に擦り付けられでも我慢した。
水を張った桶に顔を突っ込まれても我慢した。
でも簪だけは。それだけはやめて。
これからは泣かないから。なんでも我慢するから。それだけは…
『…あ"あ"あ"ぁぁ…！！』
義理母に引きちぎれそうなほど髪を引っ張られて、Aは抵抗できなくなった。
『痛い』
『嫌だ』
『やめて』
『返して、』
『嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ』
「鬱陶しい娘」
「お前なんかそこらの野良犬の餌になればいい」
そう言って、義母はAから乱暴に簪を奪った。
『………』
この日、人間のAは死んだのだ。
母親のように誰よりも優しくしてきたのに、どうして報われない？
「何故我慢する？」
男はAが独りの時いつも突然現れ、そんなことを言った。
名前は当時、知らなかった。
血のように赤い瞳で洋服を着た若い男、と覚えていた。
「あの夫婦はお前になにか恩を売ったか？ないだろう。あの屑共は、何も」
ぱりん。
何もない。私の分のご飯は捨てられることだってあるし、冬の夜に外に放り出されることだってある。私は家事を全てやっているのに。欲しいものだって我慢しているのに。
不公平だ。
…いや、でも私はお母さんの言った通り、優しい人にならなければならないから。だから耐えなきゃいけないの。これからも。
「……A。肉親が死んだ理由は、ただの事故だと、どうしても避けられなかったものだと本当にそう思っているのか？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 222人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒月薔薇(プロフ) - もう、好き この一言しか出てこない 雰囲気壊すかもしれないけど、no.5の記憶力の差の差ってもしかしたらひらがなのさだったりしますかね 違ったらすみません 2人が幸せになることを祈ってます 更新頑張ったください (2020年11月8日 16時) (
レス) id: bf38792454 (このIDを非表示/違反報告)
キキ - うぅ涙が出てきました結月さんハンカチどうぞつ□ (2020年4月2日 20時) (レス) id: 62b0e1eed4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆら - 好き… (2020年3月27日 18時) (レス) id: ad9a4e05e9 (このIDを非表示/違反報告)
白蕀姫 - 超シリアスで、面白いです！更新頑張ってください！ (2020年3月18日 21時) (レス) id: d5d3062330 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ ルナ(プロフ) - し、しのぶさん！！カッコイイ！！！美しい！！ 心にしみる作品ですね！続き楽しみにしてます♪ (2020年3月12日 17時) (レス) id: 65c9fb08c2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時：2020年2月17日 18時
