あの子が鬼になる前に。【我妻善逸】 (ページ14)

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No.13：藤の花ページ14

《『頑張って、生きて帰ってね』

「…無理なんだけどお！！？！」》

✤✤✤

✤✤

『…さーて。善逸くんは大丈夫かなあ』

Aは木を伝って、空を移動していた。

今日から善逸は最終選別の初日を迎えていた。

最後に会った時も、彼は泣き喚き散らして最後まで「行きたくない」と言い続けていた。

Aは善逸が弱くないことを知っているが、それでも＿

『(善逸くんが怯えないで戦えるところ、ちょっと想像できないなぁ)』

心配して藤襲山まで来てしまったのだ。

…

『…う』

＿藤の花が、別世界と感じさせるほどに咲き乱れている。

その傍に近づいた時、頭が痛くなって、呼吸が苦しくなって、目眩がする。

そこで殺してくれればいいのにとAは思うが、藤の花はそれだけしかAに害を与えてくれない。

一般の鬼にとって藤の花は想像できないほどの毒だろう。

しかしAは今の時点で、上弦の鬼と同等の回復力を持っていた。

また、死ぬ手段が減った。

まだあの方は私を殺してくれない。

また死から遠のく。

神よりも意地の悪い無惨は理由もないまま私を活かして、それでなんの意味があるのだろう。

『…今は考えなくていい。とにかく善逸くんを探さなきゃ』

Aは思考を跳ね除けて、善逸のいる場所に足を運んだ。