No.2:ずるい子 ページ2
……
あぁ、今日も疲れた。
1人での鍛錬を終え、照らし出された月をぼんやり眺めながらふーっと息をついて座り込んだ。
今日も来るかもしれない女の子を期待しながら。
『_こんばんは、善逸くん』
すると耳元で囁き声がしたから俺は跳ね起きた。
「ア"ーーーーーー!!!!」
声の主は女の子で、にこにこ微笑みながら俺の隣に腰かけた。
俺はその子を知っているようであまり知らない。
連絡はおろか、会う手段だってない。
ただただ彼女が、俺一人の時にやってくる。
「Aちゃん!!そうやって突然至近距離になるの止めてもらってもいい!!?吃驚するから!!!今度こそ心臓止まるかと思ったから!!!
何度も騙される俺が悪いけどさ!?」
『…ふ、あはは!!ごめんね、だって善逸くんの驚いた顔面白くて』
そう可愛らしく笑う女の子の名前はAちゃん。
歳はおそらく同じくらい。
花柄のある白い着物に、黒髪を今日はリボンで結んでいる。とても可愛らしい。
彼女は出会った時からほぼ毎日此処を訪れてくれる。
「いいけど!!ほんと可愛いなこんちくしょう」
『…またそんな風にからかって…困るなぁ』と顔が少し赤くなったAちゃんは俺から目を逸らした。
羞恥の音と自分を卑下する音がする。
本当の事なのにな。
そして、Aちゃんは俺の腰にかけてある鍛錬用の木刀を見て尋ねた。
『今日も鍛錬しているの?』
「うん。もう終わったあとだけどね。俺弱いからさ。何かしら怠ったら多分即死するから頑張んなきゃいけないの」
『…弱くないってば。善逸くんは、強くてかっこいいよ』
「……そういうのほんとずるいと思うんだけど」
『さっきの仕返し』
と、彼女はイタズラな笑みを浮かべた。
Aちゃんはしてやったり、という顔をしていたが、彼女の音に耳を澄ませると、さっき言ったことには嘘偽りないと分かる。
ああもう。Aちゃんってば本当にずるい。
111人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時:2020年1月23日 15時