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買ってしまった
机に並んだライターとタバコを見つめながらそんなことを思う
全然わかんないけど
なんとなくひとらんのことを思い出しながら
彼がしていたように箱から一本タバコを取り出して口に咥える
そして、ライターを手に取る
『かった...』
思ったよりライターの火をつけるのは力がいるらしくて
片手で慣れた手つきでつけていた彼は凄いんだと思い知らされる
両手でどうにかついた火が消えないうちに咥えてるタバコに近づけて火をつけた
『ついた...』
ゆらゆらと上に登ってく煙を見ながら
ぼうっとそんなことを呟く
途端に彼から嫌という程してた匂いが香ってきて
少しだけ懐かしく思えてしまう
タバコの煙が部屋の中を自由に泳ぎ回って
薄くなっていた彼の残り香を濃くしていく
せっかく薄くなったのになぁ
なんて考えるけど
彼の真似をして吸えないタバコを買うくらい未練たらたらな私には丁度いいかなんて
どうやって吸うかなんてわからないけど
なんとなく吸い込んでみる
『ゲホッ、ゴホッゴホッ、!』
思いっきり噎せてしまって涙が出てくる
そう言えば彼、私がタバコ吸えないの知ってたからか
ベランダでわざわざ吸ってくれてたな
なんで今そんなことを思い出したのかはわかんないけど
なんとなく、ベランダを見つめる
『あーぁ...ほんと、ばかだなぁ、わたし...』
咳き込んだから出てきた涙とは違う涙が出てきて
慣れないタバコがちりぢりと燃えていくのを見ながら
彼のことを思い出しながらそんなことを思う
『つらい...つらいよぉっ....』
ゆらゆらと揺らめく煙を見て
灰皿に置いてそんな事を口にする
寂しい、ここに彼がいない事実が
もっと一緒に居たかった
いろんなもの見たかったし色んなこと教えて欲しかった
彼がクズだとわかってて未だこんなに思い出に
ひとらんにしがみついてる私はドクズか、
そんことを思いながら
私は、机の上に置いていたスマホに手を伸ばして
連絡帳を開いて捨てきれなかった番号を見つめる
『...でるかな、』
出てくれることなんてないんだろうけど
いや、出て欲しくないんだけど
そんな事を考えながらボタンを押した
1コール、2コール、3コール
やっぱりでるわけないよね
諦めて電話を切ると
すぐにスマホが震えて着信音が鳴り響いた
私は、震える手で通話開始ボタンを押した
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