【d!】あどけない君をうつくしむ【中編集】 (ページ27)

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彼と別れて、彼が出て行ってから1週間

ふとそう言えばなんて思い出して私は部屋を歩き回っていた

『やっぱり、』

洗面台にある彼の歯ブラシ、それからワックス

ライターを見てため息を吐く

多分この調子だと部屋に色々とありそうだななんて

まぁ、とりあえず、なんて思いながら私はスマホを手にとって彼の電話番号に電話をかけた

ht『もしもし？なに？』

『あ、もしもし？ひとらん、私物結構置いてってるけど？』

ht『まだあったか。』

電話の向こうから聞こえてくる久しぶりの声に

まだ少しだけ脆い心が揺らめく

違う、私はもう付き合ってない

この人と別れたんだから

もしかしたら取りに来るのかな、なんて

淡い期待を抱いてる心が苦しい

今すぐにでも粉々にしてやりたい

ht『あー。ごめん...捨てといて』

『え、捨てていいの？』

ht『もう要らないものばっかだし。全部捨てといてくれたらいいから』

『...』

ht『A？』

『あ、うん。わかった。捨てとくね』

ht『ん』

『わかった。ばいばい』

何にも言われず切られた電話を見て虚しくなる

ちょっとだけでも期待しちゃってた私がバカみたい

1週間ずっと吐きっぱくらいの勢いのため息をまた吐く

今は特別おっきいの

まだ、彼の匂いが薄く残ってる部屋を見渡して

私はもうどうでもいいやなんて考えながら

大きめのゴミ袋を手にとって片っ端から彼の私物を詰めて行った

少しヨレたワイシャツ、解けたまんまのネクタイ

お揃いのキーホルダー、2人で買ったペアルックのマグカップ

私とのツーショット写真が入った写真立て

全部全部ゴミ袋の中に詰め込む

ついでに彼から貰ったものも詰めてく

彼がくれた手紙、お揃いのキーホルダー

誕生日の日にくれたネックレス、ネーム入りの指輪

彼に合わせて買ったスマホケース

悲しくて、虚しくて

その全部を捨てるように私はゴミ袋に全部詰めてく

彼が居なくても私は生きて行けるし

そのうちこの生活にも慣れが出てくる

寂しいなんて思わなくなるし

彼氏だってできるだろう

だから、なにも悲しむ事はない

後悔する事はない

私は被害者だし自分から決意できた強い人間なんだから

なんて、頭の中ではそう思ってるけど

体は思うように動かない

彼の残り香が鼻腔を擽って

私の手から全てが零れ落ちて行ってる気がする

私は、彼の残り香が消えないように

開けていた窓を静かに締めた