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松崎を連れ出して、2人で人混みから抜け出す
余裕そうに走っているが実際は心臓はバクバクだ
大丈夫、昨日の夜何度もハギを相手にたくさん練習したんだ
実際、卒業式で告白するかしないかはかなり悩んだ
松崎のことだからいつもツンツンされてるみたいに断られるかもしれないし
でも、でも
ずっとこのままの関係じゃダメだと思う
だから今、言うしかない
『懐かしいね、この場所』
「俺からしたら最高の思い出だけど、松崎からしたら最悪な思い出の場所だろうな」
『ん〜、まあ、前まではね』
え、それって
後ろを向いてしまったから松崎の表情は分からない
パシッと手首を掴んで松崎をこちらに向かせる
「…松崎に言いてえことがあるんだけど」
『うん』
「俺は、松崎のことが好きだ」
『…うん』
「最初は匂いが好きだったけど途中からは松崎の人柄が1番好きだなって思ってる」
「今はもうほんとに松崎の全部が好きなんだ。俺に対してちょっと冷たいとこすら好きなんだ。ずっと松崎のそばにいたいいって思ってるんだ」
だから、
「だから、俺と付き合ってくれませんか」
ずっと俺の目を見つめていた目が細くなる
『…敬語似合わないね、松田くん』
「…悪かったな、敬語が似合わない男で」
『…私は、敬語が似合わないような松田くんが、好き…だよ』
一瞬、時というか世界が止まった感覚がした
さっきの余裕ありげな顔はどこへいったのか
自信なさげな赤い顔で俺の右手と自分の左手を絡ませて
恋人繋ぎをしてきた
『…だから私でよければ、付き合ってください』
「…ほんとに、いいのか?」
『…松田くんじゃなきゃ嫌だ』
はあ…良かった
気づかない間にかなり体に力が入っていたようで
ほっとしたら体の力が抜けて
一気にしゃがみ込んでしまった
『松田くん、顔真っ赤じゃん』
「松崎も人のこと言えねえからな」
『うるさい』
近くの壁の影から
ハギの声と、松崎の友達の声が聞こえた
松崎は聞こえていないようだった
どうせなら、見せつけてやるか
『っわあ!』
松崎の背が壁に向くようにして
自分の腕の中に松崎を収めた
こっそり覗いていたハギと目が合ったから
精一杯かっこつける予定だったのに
松崎のせいでどうしても顔が緩んでしまったから
それは阻止された
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作者名:ゆづ | 作成日時:2023年5月28日 23時