急に会えなくなる話／ドロシア：�� ページ17
今まで誰にも顧みられなくて、初めて知った感情は寂莫だった。
いつも隣に飾られていた妹も、気づいた時にはどこかに持って行かれて、本当にひとりぼっちになってしまった。
この世界にはわたしの他にも人はいるはずなのに、誰もわたしを見てくれない。誰かにわたしを見て欲しい。
そんな気持ちがじわりと染み出した頃に、あなたが現れた。
わたしの元へ来たばかりのあなたは、じっとわたしが描かれている絵画を見つめているだけだった。
人が来るのが嬉しくて珍しくて、わたしもあなたを観察していたのを覚えている。
(やっとわたしの絵を見てくれた！)
心は幸せでいっぱい！
今まで沈んだ気持ちしか知らなかったから、新しい感情を知れてまた喜んで、そして踊り出しそうになった。
わたしは描かれていたから動けなくて踊れなかったけれど、そんなことも構わなかった。
あなたが来るようになって少しした。
視界にあなたの姿を捉えても最初のような歓喜は湧かなくなった。
でも姿を見たら自然とにこっと笑っちゃう。
でもある日、いつもみたいにわたしを見ていたあなたが、ふと口を開いた。
「もしかして……だけど、あなたって自我があるの？」
驚いてドキリと心臓が高鳴った。
わたしは絵に描かれていたから言葉や仕草での返事はできなかったけれど、心の中で何度も何度も頷いた。
すると気持ちが伝わったみたいで、あなたはふっと微笑んだ。
「ねえ、ここにお話に来てもいい？」
(もちろん！)
「私はA。えっと、あなたは……」
(A、Aね。すっごくいい名前！ もう絶対忘れないわ！)
あなたは絵の下の方で何かを探しているようだった。
プレートを探しているのかしら？
それだったら無いわ。どうしてか知らないけれど、わたしのいる絵画には名前が無いの。
「題名はないのね……じゃあ、あなたに名前をあげる！」
急なあなたの申し出に、理解が追いつかず呆然とした。
名前をくれるってどういうこと？ 絵に題名をつける、ということかしら？
「そうね。絵に描かれているから、描く……ペイント？ ううん、ドロー、ドロシー？ ドロッチェ、は盗賊だし……」
違う。
Aはわたしの“絵画”に題名をつけるんじゃなくて、わたし“自身”に名前をつけてくれたんだわ。
「……ドロシア？ ドロシア！」
ドロシア。あなたがくれた名前。
わたしは絵画なのに、あなたは贈り物をしてくれた！
凄く嬉しい！ Aといると喜びの連続だわ！
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東方&カービィラブ - 初めまして。全て読ませていただきましたが、どのお話もとても素敵でした！更新頑張ってください！これからも応援させていただきます！ (2018年8月28日 17時) (
レス) id: 17342e30fb (このIDを非表示/違反報告)
豆打(プロフ) - おとうふさん» ありがとうございます！これからも思いついたままに書いていくので、どうかお付き合いください。 (2018年8月5日 22時) (レス) id: b19a68a9b2 (このIDを非表示/違反報告)
おとうふ - コメント失礼します！この小説を一通り読みました。それぞれのキャラクターを原作通りに表現できていて読んでてとても面白かったです！これからの更新楽しみにしてます！！ (2018年8月5日 19時) (レス) id: 656bcd2590 (このIDを非表示/違反報告)
豆打(プロフ) - さうざん(菜っ葉)さん» ありがとうございます！大分自分の解釈や妄想も入っていますが、そう感じていただけていると安心しました。 (2018年7月30日 21時) (レス) id: b19a68a9b2 (このIDを非表示/違反報告)
さうざん(菜っ葉)(プロフ) - いきなりのコメント失礼します。作者様のお話を全て読ませていただきました。どれも原作通りのキャラクターで、文章がとても細かく表現されていて、読みやすかったです。これからも更新頑張ってください！長文失礼しました。 (2018年7月29日 18時) (レス) id: 883b22f60a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆打 | 作成日時：2018年7月9日 23時
