さいごに賭ける話／クィン・セクトニア ページ12
随分と久しく彼女がわらわの元へやって来て、にこりと困ったように笑い率直に尋ねる。
「最近民に圧政を敷いていると聞いたわ。本当なの？」
笑顔の裏に隠れつつも寄せられている信頼感と、それに対するわらわの罪悪感に圧され、肯定の言葉を紡ぐことができなかった。
彼女には……Aには、こんなに醜いわらわを知られたくはないのだ。
——醜い？ わらわは醜くなどない。
「ま、セクトニアがそんなことするはずがないわよね！」
あぁ、彼女からの信望の念が重い。昔と変わらぬ笑顔が眩しい。
本当は守るべき民を見下しているなどと知れたら、彼女はどういう反応を示すだろうか。
譴怒するか？ 泣き沈むか？ それとも……何も言ってはくれぬのだろうか。
「ただわらわは……支配をしたい。美しくありたい。そう強く願っているのみだ。この国を手放すものか、わらわが統べねばならぬ、と……」
胸中に渦巻くどろどろとした感情を振り払い、少しの期待を込め、胸の内を明かした。
普段から感情の隆起が激しい彼女は大きく目を見開く。
Aの唇が僅かに開き、言葉が発せられる。
しかしただ彼女が言ったことといえば、たった一言のみ。
「……あなたも、変わったのね」
ただ辛そうに眉尻を下げた笑みで言うだけだ。
昔は言われるだけで薬となった彼女の言葉は、もうわらわを満たしてはくれぬ。
——使えぬ。わらわの望むことができぬ輩など不要だ。
「もうよいであろう。帰ってくれぬか」
「……」
彼女は何も言葉を残さずに帰って行った。
ため息と共にやっと肩の荷が下りたような心地がした。
……なぜだ？ なぜわらわは彼女と共にいることに疲れを感じている？
いや、疲労ではなく、苦悩だというのか？ 彼女を手放したことに？ 言葉のない拒絶を感じたことに？
考えれば考える程苦しくなっていく。あぁ、もう、あの鏡に頼る他ない。
鏡の前に立てば、わらわの心は満ちる。
彼女に為し得なかったことを、この鏡はできる。
ただ希うだけでよいのだ。
もっともっと、美しくありたい。そう、もっともっと……
胸の奥で何かが芽吹くのを感じた。溢れ出る激情が心地よい。
それにそっと身を任せた。
愛人になる話／ワドルドゥ隊長→←小言を言われる話／エスカルゴン(?)
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東方&カービィラブ - 初めまして。全て読ませていただきましたが、どのお話もとても素敵でした！更新頑張ってください！これからも応援させていただきます！ (2018年8月28日 17時) (
レス) id: 17342e30fb (このIDを非表示/違反報告)
豆打(プロフ) - おとうふさん» ありがとうございます！これからも思いついたままに書いていくので、どうかお付き合いください。 (2018年8月5日 22時) (レス) id: b19a68a9b2 (このIDを非表示/違反報告)
おとうふ - コメント失礼します！この小説を一通り読みました。それぞれのキャラクターを原作通りに表現できていて読んでてとても面白かったです！これからの更新楽しみにしてます！！ (2018年8月5日 19時) (レス) id: 656bcd2590 (このIDを非表示/違反報告)
豆打(プロフ) - さうざん(菜っ葉)さん» ありがとうございます！大分自分の解釈や妄想も入っていますが、そう感じていただけていると安心しました。 (2018年7月30日 21時) (レス) id: b19a68a9b2 (このIDを非表示/違反報告)
さうざん(菜っ葉)(プロフ) - いきなりのコメント失礼します。作者様のお話を全て読ませていただきました。どれも原作通りのキャラクターで、文章がとても細かく表現されていて、読みやすかったです。これからも更新頑張ってください！長文失礼しました。 (2018年7月29日 18時) (レス) id: 883b22f60a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆打 | 作成日時：2018年7月9日 23時
