理想と異なりますが？３（黒） (ページ1)

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いつもの時間に起きて、支度をする。
外に出て少しだけ肌寒いけど、眩しい太陽を浴びながら歩く。
朝の電車のダイアルも覚えてきた。
ん…？駅のホームにはいつもより人が多い？

シワひとつないスーツ、
ヨレてないカバンを見かけて、
新年度だということを実感する。

あー、そうだ。
今日から4月だもんね。
もう少しで制服姿も増えるのかな。

呑気なこと考えてたけど、
今日から後輩が出来る。
緊張してきた…。

周りが何も見えなくなり
LEDの懐中電灯いくつあっても足りなくなるくらい
ブラックだった前の職場でも
1年半くらいいたから、後輩居たはずだけど、
全然覚えてないんだよな…。

確か、みんな早めに辞めたり、休職してたような…。
私も忙しすぎて関わる機会がなさすぎたし。

つまり、社会人になって4年目だけど、
ほぼ初めての後輩ができるってわけ。

どう接したらいいのかな。
でもでも、まだ指導係になる年でもないし、
そんなに気張らなくてもいいか。

考え込んでたら会社に着いた。

「おはよーさん」
「おはようございます！康二さん」

デスクに着くと1番に声をかけてくれた康二さん。
関西出身で、明るく楽しい先輩。
仕事やプライベートのことでもいろいろ相談に乗ってくれる、
優しい人。

「今日から先輩やな！」
「あ！気にしないようにしてたのに！緊張してきたじゃないですかー！」
「そうやと思ったわ！俺のような先輩目指してもええんやで？」
「わー、頑張りますー」
「棒読み！やめい！」
「あはは！」
「笑い事ちゃうー！！」

康二さんがふざけて怒ってる。
真面目な話、めちゃくちゃ憧れてるけど、
康二さんみたいになるのは難しそう…。

後輩の緊張を一気に溶かして、
話しやすい環境を作ってくれてるし。
すごいなあ…。

康二さんと就業時間まで、話しながら
準備してたら「おはよう」と胸をときめかせる声が聞こえた。

「お！めめ！おはよう！」

目黒蓮。
私の元指導者。
そして。

「おはようございます」
「竹嶋さんおはよう」
「ちょっと、2人とも相変わらずやなー」
「何がですか？」
「会社では堅苦しいというか。徹底してるなあと思て」
「だってAがそうしろって」
「ちょ！蓮！名前呼び禁止！」
「Aだっていま俺のこと名前で呼んだよ」
「あ…」

そして、恋人でもある。

「今のは間違えたというか…！」
「え？」
「わざとじゃないのでセーフです！」
「なにそれ」

蓮がフッと笑った。
畜生、かっこいいな。