10年越しの君は。２ (青)

人見知り ページ11

分かったよー、気をつけてねー、と言って電話を切る。

「…」
「…」

なんというタイミング！
心臓がドッドッドッドッと大きく音を立てているのがわかる。
そして気まずい。

「…マネージャーなんだって？」
「あ、えと、これから挨拶回りしてから来るって…」
「そっか…」

また沈黙。
何言おうとしてたんだろう。

「…ごめん、渡辺くん。話遮っちゃって」
「いや、大丈夫」
「それでなんだっけ？」
「ああ…いや、今はいいや」

渡辺くんが目を合わせずに悲しそうに言った。

「え、ごめん」
「あ、いや、本当に大丈夫！大した話じゃないし」
「…そう？」
「うん、また今度にでも」
「…うん」

気になるけど、また今度、と言われて嬉しくもなり悲しくなる。
今度はあるのかな。分からないけど。
それを繋ぎ止めるために約束をするほど、
今の私にその勇気はない。

そのまま渡辺くんは私の楽屋を出た。
なんか急に体温が高くなった気がする。
なに！渡辺くん、言いたい放題言って帰ってった！
なんなんだ！
可愛かった、綺麗、今も可愛いとか、
一歩間違えれば口説きに近いからね！

久しぶりにたくさん話して懐かしさを感じるどころか、
10年ぶりに話した渡辺くんは
初めて話したかのように別人な気もした。
渡辺くんの言った意味が分かった気がする。


それからというもの、ドラマ佳境時期に
バラエティや情報番組のみならず、
雑誌、SNS、WEB記事など、最終回に向けて
これでもか！ってくらいに番宣！

合間にふと渡辺くんのことを思い出したりしたけど、
まあまあ忙しくて、ゆっくり浸る時間はない。

ゼロイチも残り2話となった。
その合間にラフツボの顔合わせが始まった。
番組に関わる全スタッフ、出演者が揃い、
色々と確認事項を行っていく。

初回の撮影日と初回の放送日まで決まってるらしい。
顔合わせ終了後
一人一人また挨拶をかわす。
最後に残ったのはあの元気いっぱいの人。

「柿崎さん」
「向井さん、お久しぶりです」
「よろしくお願いしますね〜」

この前みたいに元気いっぱいの向井さん！…と思ったけどなんか大人しめ？
不思議に思ってじっと見てしまう。

「ん？…俺の顔になんか付いてます？」
「ああ、いや、…なんか元気ないですか？」
「え？」
「前お会いした時より元気がないように思えて」
「…」
「あ、勝手なイメージでした。すみません」
「あ！いや、ちゃうくて、俺人見知りなんです」
「え？」

い、意外すぎる〜！

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