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「すき。…こんなもんさま、だいすき。」
「え、」

すっぽりと私の足の間にいつの間にか収まっていた彼女に、ぐいっと襟を掴まれた。

気づいたときにはもう遅かった。

ふにっと何か柔らかいものが頬に触れていた。

「ふふふふ、びっくりした?」
「はあああああ」

思わず頭を抱える。

危うくやり返してしまうところだった。

彼女は、男の理性というものの脆さを知っているのだろうか。

否、知っているはずはない。

ふう、と息を吐いて心を落ち着かせる。

「…ほら、お布団行くよ。」
「…」

返事がないと思ったら、彼女は完全に夢の中だった。

彼女の膝と背中に手を差し込み、横抱きにして立ち上がる。

「困った許嫁だね。…隙ばかり見せてたら、いつか襲っちゃうよ。」
「…」

耳元で囁いても返ってくるのは吐息だけ。

彼女の部屋の襖を開け、布団に体を横たえた。

そっと彼女の真っ白で柔らかそうな頬に触れる。

「おやすみ。」

ちゅう、と彼女の頬に口づけして部屋を出ようと立ち上がったとき。

「おっと」

何かに引っ張られていることに気がついた。

目をやれば、小さな手が私の着物の裾を握っていた。

「…そんなことしてたら、いつか本当に襲うからね」

しょうがないので、彼女の布団の横で寝ることにした。

すっと静かに目を閉じる。

誰かの横で、安心して眠りにつけるとは今まで考えられることではなかった。








ちゅんちゅん、とすずめが鳴いている。

あら、昨日は、確か…

「ん、」

ゆっくりと体を起こすと、ふわりと自分ではない誰かの匂いがした。

覚えがあるかおりにじんわりと頬が赤くなる。

わずかに混じる、火薬の匂い。

雑渡様の、残り香だわ…

残り香があるということは、雑渡様がここにいたということ。

昨日、何が…?

残念ながら、昨晩の記憶は殆どなかった。

雑渡様とお酒を飲み始めたところまでは鮮明に覚えているのに、それ以降のことが、何も思い出せない。

頭を捻って考える中、はっと太陽の光の明るさに気がついた。

大変、寝坊してしまったわ

急いで身支度をすませ、台所までいくと、作り置きをしておいた雑炊の量が少し減っている。

雑渡様が、きちんと朝餉を取ったことがわかってほっとした。

さっと朝餉をとり、洗濯物を干そうと外へでた。

外は少し肌寒いけれど、よく晴れていて、洗濯物もよく乾きそうだった。

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設定タグ:忍たま , 雑渡昆奈門 , タソガレドキ   
作品ジャンル:恋愛
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ゆき - ハナイツキさん» 今までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!最初の方から何度もコメントを頂いて、本当に励みになりました!感謝の言葉しかございません。さらなるいちゃらぶを目指しますので、続編もよろしくお願いいたします! (2023年5月2日 23時) (レス) id: 11850f2a40 (このIDを非表示/違反報告)
ハナイツキ - 完結お疲れ様です!本ッッッッ当に大好きな小説です!もう雑渡さんにキュンキュンしまくりで、最後の結婚のくだりでは涙ぐみながら読むくらい、、続編も読ませていただきます!雑渡さんとのいちゃラブ生活のご提供、本当にありがとうございました!!! (2023年5月1日 23時) (レス) @page50 id: a0586360be (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - ミリリン(・ω・)さん» 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。続編も書こうと思っておりますので、気長にお待ちいただければと思います。続編もよろしくお願いいたします! (2023年3月28日 23時) (レス) id: 11850f2a40 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - astrumさん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!続編については、書いてみようかなと思っております。続編の方も、よろしくお願いいたします。雑渡さんとのいちゃらぶ生活…頑張ります笑 (2023年3月28日 23時) (レス) id: 11850f2a40 (このIDを非表示/違反報告)
ミリリン(・ω・) - え?好きです。 ヤバイですね むっちゃ面白かったです! 続編出たら絶対読みます。 気長に待っています! お疲れ様でした! 素敵な作品をありがとうございました! (2023年3月28日 21時) (レス) @page50 id: 5a9db1aae6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆき | 作成日時:2022年1月30日 0時

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