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「甚兵衛様、本当にありがとうございました。この御恩は生涯忘れません。深く、感謝申し上げます。」

「よいよい、顔をあげよ。そう堅苦しくては敵わん。」

すっと顔をあげて辺りを見回す。

雑渡様は、いらっしゃらない。

「それで、そなた、これからどうするつもりなのだ?」

「…そうですね、これからはどこかの城下町で、働きながら暮らすかと。」

「…そうか、そなたは普通の姫とはだいぶ違ったからな、案外できるのかもしれんが。」

いつのまにか甚兵衛様との会話に夢中になっていて、誰かがすうっと部屋へ入ってきたことに気づかなかった。

「甚兵衛様、また顔を見せに参りま…」

そこで、やっと雑渡様がいらっしゃったことに、気づいたのだ。

「雑渡、さま。」

「ん?そなた、昆奈門のことを知っておったのか。」

「いえ、私、その」

言葉が、見つからない。

初恋の、相手。

今まで、城主の娘である私がいくら願おうとも想いは届かないと思っていたのに。

今なら、届くかもしれない。

もしかしたら。

想いが胸から溢れ出し、私の口からついにこぼれ出て行った。

「雑渡様。私をどうか、嫁にしてくださいませ。」

「…は?」

「なぬっ?!」

気づいたら、彼の前に座り、彼の手を離さないとばかりに強く握って、詰め寄っていた。

「雑渡様、どうか、私を嫁に」

「…2回言わずとも分かっているつもりなのですが。」

「それとも、もうすでに婚約者の方や奥様がいらっしゃいますか。」

「いえ、いませんが。」

そうよね、雑渡様は齢20歳。

まだまだお若くて、祝言どころではないわよね。

「それならば、私をどうか」

「…お待ちください、姫。」

「私はもう姫ではありません。ただの1人の女です。名前でお呼びくださいませ。それから、敬語もおやめください。旦那様になられるお方に敬語を使われては、恐縮してしまいます。」

「いや、そう決まったわけでは。」

「ちょ、ちょっと待て。待て。待て、Aよ。」

「なんです、甚兵衛様?なにか問題でもございますか?」

「問題しかないだろう!」

「何が問題ですの。」

「わしがそなたの父に顔向けできぬではないか!」

「あら、お父様もお母様も良いとおっしゃってくださるはずです。さあ、問題はもうありませんわね。」

「いやいやいや、問題しかないでしょう、姫。」

「雑渡様。私を姫と呼ばないでくださいませ。」

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設定タグ:忍たま , 雑渡昆奈門 , タソガレドキ   
作品ジャンル:恋愛
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ゆき - ハナイツキさん» 今までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!最初の方から何度もコメントを頂いて、本当に励みになりました!感謝の言葉しかございません。さらなるいちゃらぶを目指しますので、続編もよろしくお願いいたします! (2023年5月2日 23時) (レス) id: 11850f2a40 (このIDを非表示/違反報告)
ハナイツキ - 完結お疲れ様です!本ッッッッ当に大好きな小説です!もう雑渡さんにキュンキュンしまくりで、最後の結婚のくだりでは涙ぐみながら読むくらい、、続編も読ませていただきます!雑渡さんとのいちゃラブ生活のご提供、本当にありがとうございました!!! (2023年5月1日 23時) (レス) @page50 id: a0586360be (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - ミリリン(・ω・)さん» 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。続編も書こうと思っておりますので、気長にお待ちいただければと思います。続編もよろしくお願いいたします! (2023年3月28日 23時) (レス) id: 11850f2a40 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - astrumさん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!続編については、書いてみようかなと思っております。続編の方も、よろしくお願いいたします。雑渡さんとのいちゃらぶ生活…頑張ります笑 (2023年3月28日 23時) (レス) id: 11850f2a40 (このIDを非表示/違反報告)
ミリリン(・ω・) - え?好きです。 ヤバイですね むっちゃ面白かったです! 続編出たら絶対読みます。 気長に待っています! お疲れ様でした! 素敵な作品をありがとうございました! (2023年3月28日 21時) (レス) @page50 id: 5a9db1aae6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆき | 作成日時:2022年1月30日 0時

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