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夜の蜘蛛は縁起が悪い ページ9

調べていくうち、百華の初代頭領に辿り着いた。地雷亜と呼ばれる男。かつての大火事で死んだらしい。
ならば別人か、とも思ったが、そんな大層な忍が火事程度で死ぬとは思えない。
それに百華を務めていたならここで薬を売買するルートなどにも詳しいはず。

入ってくるならとりあえず港か、と手がかりを探しに港へ向かうことにした。



月の光に照らされて、刃がちらりと光っている。
血のにおいがした。誰かが戦っているらしい。嫌な予感がする。

『…銀!月詠!』
「来るな!」

近付いてようやく見えた。張り巡らされた無数の細い糸。
こちらを見下ろす男と、傷だらけの銀と月詠。

『…あんたが地雷亜、で、合ってる?』
「…貴様もいたな。どうやら俺を知っているらしい。」

本人らしい。いや、正直そんなことはもうどうでもよかった。

『おれのもんに手ェ出す命知らずたァ知らなかったぜ。殺してやるよ、お望み通りな。』

木刀を握りしめた。



「ふん…さすがに鳳仙とやり合うだけのことはある。なかなか良い太刀筋だ。」

細い糸を足場に飛び回る。流石は忍。音がない。
どうにか気配を察知して木刀を振るう。
一瞬捉えた一太刀が地雷亜の腹を掠める。

「何度か深手は負わせたはずだが…その様子を見るに、痛覚が麻痺しているな?ならばこちらを狙った方が有効か。」

地雷亜の苦無が銀の方へ。どうにか弾いている。

「くそッ!追いつけねェ…!」
『銀!離れてろ!』

気を取られ、目を離してしまった。

「よそ見なんて随分余裕だな。」

地雷亜の手がおれの目元に触れる。…血のにおい。
目を開けない。
銀の気配に近寄って背中を預ける。

『悪ィ、なんも見えねェ。』
「汚ェもん付けられやがって…帰ったら消毒だからな…!」

苦無を弾く。僅かに気配を感じて、咄嗟に銀の隣で木刀を振るった。何かに掠める。
不意に隣から声が聞こえた。

「…蜘蛛の巣というのはな。掛かったと気付いた時には、もう遅いのさ。」

納刀の音。…腹に衝撃。血飛沫が上がる。斬られたらしい。
後ろにいた銀が倒れ込んできた。

「銀時!迦葉!」

月詠の悲鳴に似た叫び声が聞こえる。
あの僅かな気配は地雷亜の刀。銀の傷は大丈夫だろうか。と呑気に考え抱きしめる。

「…まさかその状態でこれに反応するとは。だがお前自身は致命傷だ。斬撃を軽減されたとはいえそいつも無事では済むまい。…お前たちの死をもって、月は満ちる。」

そのまま海に落ちた。

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作者名:逆叉 | 作成日時:2024年3月28日 22時

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