夜の蜘蛛は縁起が悪い ページ8
「よう、久しぶりじゃな。」
ここは吉原。日輪に呼ばれ、4人でやってきた。久しぶりに会った、というのに銀と月詠が言い合いを始める。
『おれこういうのドラマで見たよ。だんだん近付いてってちゅーするんだよな。』
「しねェよッ!誰がこんな女と!」
「そんなドラマないわッ!…わっちの唇はこやつよりもぬしに…」
「オイてめェ…何言おうとしてんの?何照れてんの!?」
ああほらまた。
笑って眺めていると日輪が2人を止めた。
「迦葉さん、あんたもあんまり2人を虐めてやるんじゃないよ。」
『はァい。』
「鳳仙がいなくなって、確かに吉原は自由になった。だが、正直鳳仙がいた時のほうが治安自体は良かった。」
銀と共に歩きながら月詠から話を聞く。攘夷志士が暴れ、百華も首が回らないと。
とりわけ問題視されているのが非合法ヤク物の売買。
一切を仕切っている者は吉原の上客だが、その正体は謎のまま。
「そんな野郎どうやってとっ捕まえればいいってんだい。こっちは騙し騙しなんだよ。」
「心配いらん。掴むものは掴んでおる。…蜘蛛を見た。」
男の首に蜘蛛の刺青。
銀は心当たりのある攘夷志士を漁るらしい。
『おれは別行動するかな。人探しは手が多い方がいいだろ。』
「…危なくなったらすぐ俺のところに戻るんだぞ。」
『わかってるって。じゃあ月詠、銀を頼む。』
月詠の頭をぽんぽんと軽く叩き、その場を後にした。
「…惚れんなよ。」
「…手遅れじゃ。」
蜘蛛の刺青なんて悪趣味だなァ…鴉も似たようなもんか。
町を歩く。最初に来た時は人工の明かりに照らされてごちゃごちゃとしていたが、太陽が上がってからはおれ達の町となんら変わりないように思う。…変な店は多いが。
「ねェ旦那。あんた良い顔してるねェ。どうだい、今夜はあたしと過ごしてみないかい?」
「ちょっと。その女よりあたしのほうが満足させてやれるよ。」
さすがは遊郭。すぐに女に囲まれてしまった。ちょうどいい。
『…いい女ばっかりで選べねェや。ところでお嬢さん方、最近色男に会ったりしなかったか?おれ、ちょっと探してんだけど。』
「色男…?ああ、1人いるよ。最近吉原にやってくるようになったのに、なんだか昔からいたような素振りで…あれはいい男だったねェ。蜘蛛の刺青なんていかしててさ。」
…ビンゴ。
少しずつ話を聞きだす。新しい情報は少ないが、十分だ。
その用心深さはどこか忍のような。
百華を思い出して、そちらを漁ることにした。
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作者名:逆叉 | 作成日時:2024年3月28日 22時