大体みんな奥の手がある ページ7
『オイ、危ねェから触んなよ。』
「あ、す、すみません…」
俺達の部屋を掃除していた新八が、立てかけていた不倶戴天に触れようとしているのが見えた。
問題はないだろうが、念の為。
「そういやこの刀、ずっと持ち歩いてますけど使ったところを見たことがないような…何用の刀なんですか？」
『…そりゃお前、何本か腰にあるとかっこいいだろうが。』
「そ、そんな理由で！？」
『ほら、抜けねェだろ。』
アルタナを使わず抜刀を試みる。ぴくりともしない。
「なんだ、切り札みたいなもんかと…って、じゃあ危なくないじゃないですか。」
『あは、びびってる新八面白ェ。』
「迦葉さん！」
からかわれたと拗ねた新八は買い物へ。
「で、本当は何用の刀なんだ？」
『…ジャンプ読んでたんじゃねェの。』
赤い目がおれを映す。立ち上がって、迫ってきた。
「鳳仙との戦いで使ってたよな。鞘のまま、手を斬り落とした。妖刀じゃねェか。初めて会った時から大事そうに抱えてたが、そりゃなんだ？」
気付けば背中に壁が触れる。顔の横に手をつかれ、逃げられなくなってしまった。
『…銀に会う前、おれはどっかの崖下で目覚めたんだ。投げられたんだろうな。その刀はその時傍に落ちてた。錆びてんのか、抜刀できねェ。鞘のまま斬れんのは、銀の言う通り、妖刀なんだろうよ。』
嘘というのは、真実と混ぜて語ることでその信ぴょう性を増す。
抜刀できないのはアルタナを必要とするから。鞘のまま斬れるのは、あの時斬ったものが肉でも骨でもなく、鳳仙自身の手と腕との縁だから。
不倶戴天。縁斬りの怨刀。
少し顔を顰めた後、そうか、と呟いた。
『というか見てたのかよ…』
「というか1日好きにしていいって言ったよな？」
『あっ…』
銀がにやにやと笑っている。
「じゃあ次に新八と神楽がいない日。…覚悟、しておけよ？」
わざわざ2人のいない日を選ぶなんて嫌な予感しかしない。少しだけ後悔した。
『…そろそろ退けよ。』
質問には答えたし、銀もそれで納得したはず。なのに退かない。
「いい眺めなんだよなァ…」
『はァ…？』
「…なァ迦葉。お前は、俺のか？」
変なことを聞いてきた。
『お前のだよ。銀が拾ったんだから。』
「そういう話じゃねェ。…あァクソ、まだ勇気も出ねェなんてよ…」
『銀…？』
苦しそうな顔。どこかが痛むのだろうか。
ゆっくりと頭を撫でる。
「…迦葉。もう少し、待っててくれ。」
そう言っておれを抱きしめた。
『…わかった。』
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作者名：逆叉 | 作成日時：2024年3月28日 22時
