丁か半か ページ38
「そういやお前さん、なんでこんなところに？」
『おれが聞きてェ。お前らんとこの女が神威を助けろってよ。…目的は違ったらしいけど。』
軽く見渡すがここにはいないらしい。女、と聞いて阿伏兎の顔が歪んだ。
「なに、俺を助けにきてくれたの？優しいね。じゃあ俺と一緒に行こうか。」
『行かねェ。』
「どうして。俺はこんなに迦葉のことが好きなのに。」
『…あ？』
にこにこと言うから聞き流すところだった。…ああ、いや、普通にお気に入りって話か。
「お気に入りとかじゃなくて、俺はあんたを愛してるんだ。」
『人がせっかく流してやろうと思ったのに…おれは応えらんねェぞ。愛とかわかんねェからよ。』
「いいよ。別に諦めたりしないから。迦葉、俺を見て。」
江華に似た綺麗な顔を見つめる。返り血なんか見たらあいつも発狂するんだろうか。
そのままおれの頭を掴んで、唇を重ねた。
「好きだよ、迦葉。」
『て…めェ…』
優しい眼差し。
思わず目を逸らす。そんな目でおれを見るな。
…顔が熱い。
「あれ、照れてるの？かわいいなぁ。」
『…るせェ。こっち見んな。』
「団長、遊ぶのも大概にしてやれよ。どうやら慣れてないらしい。意外だねェ、お前さんほどの色男なら遊んでるもんだと…」
『はっ倒すぞ。』
不意に後ろに引っ張られ、煙管のにおいに包まれた。
また子が騒いでいるのが聞こえる。
『晋助？』
「てめェはすぐ変なもん引き寄せやがって…神威、こいつは俺のもんだ。手ェ出すな。」
「別に晋助と付き合ってるわけじゃないんでしょ？じゃあいいじゃん。」
ばちばちと火花を散らす。…手ェ組んだんじゃなかったっけ。
しばらく無言が続く。おれは晋助に抱きしめられたまま動けなかった。
「なんなんスか戴天！晋助様に抱きしめられたからって…！」
目の前で怒るまた子。
神威の告白に動揺するあまり、そのまま抱きしめてしまった。
「な、何するんスか！？」
『…ほら、晋助と関節…ハグ？』
「早速てめェは何やってんだ。…オイまた子、こいつはやめておけ。」
引き剥がされる。顔を真っ赤にして動かなくなったまた子がいた。
『…え、なに、かわいいとこあんじゃんお前…』
「迦葉、そこまでにしておかないとまた晋助が拗ねてしまうでござるよ。」
『あは、安心しろよ晋助もかわいいからよ！』
無言になった晋助に頭を掴まれ、口付けをされる。
「やっぱお前にはこれで教えるしかないみてェだな？」
『な、なんで怒ってんの…』
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作者名：逆叉 | 作成日時：2024年3月28日 22時
