閑話。 ページ33
遊女達に囲まれながら吉原を歩く。どんどん人が増えて、歩けなくなってしまった。
どうしたものか、と考えていると声がかかる。
「…ぬし、そんなところで何をしておる…」
『月詠ォ…助けて…』
「じゃあ迦葉さん、よろしく頼んだよ。」
『上手く教えられるかわかんねェぞ…』
今日は日輪からの頼みで晴太に勉強を教えにきた。前に神楽に料理を教えた件が謎に広まって、おれは教えるのが上手い、みたいな話になってしまったらしい。
「迦葉さん!眼鏡かけて!先生っぽくなってやる気でると思うんだ!」
『変わんねェだろ…』
おれの片側の髪を耳にかけ、黒縁の眼鏡をかけられる。
「…迦葉さん、いや迦葉先生!ずっとおれの先生やってよ!」
『んな暇じゃねェよ。こんなんでやる気でんのか?…まァいいや、やるぞ。』
問題集を解きながら丁寧に説明をする。晴太も真剣に聞いているので、時間はあっという間に過ぎ去った。
『…うん、正解。やるじゃん、賢いな、晴太。』
「へへ…!」
赤丸が増えていく。頭を撫でてやると嬉しそうに笑う。
「どうじゃ晴太、課題は…」
「月詠姉!迦葉先生すごいんだ!あっという間に終わっちゃった!」
『解いたのお前だよ…何、月詠。』
おれをじっと見て固まっている。顔を赤くして、向こうを向いてしまった。
「おや…迦葉さん、眼鏡もよく似合うんだねェ。助かったよ、これ、お礼に。」
包みを渡される。
要らねェ、と言えば貰っとくれ、と押し付けられた。
「また教えてね、迦葉先生!」
『おー。良い子にしてろよ。』
頭を撫で、その場を後にする。
眼鏡返し忘れたな、と歩いていると、後ろから誰かに手を掴まれた。
振り向くと、赤い顔の月詠がこちらを見ている。
『どうした?』
「…に、似合っておる、な。どうじゃ、そのままわっちのことも…」
わざわざ追いかけてきてそんなことを。思わず笑ってしまった。
「な、なにを笑っておるのじゃ!わっちは…」
『悪ィ悪ィ。…月詠、お前も良い子だよ。』
頭を撫でる。より顔を赤くして、嬉しそうに笑った。
『ただいまァ。』
「迦葉さん!おかえりなさい…あれ、その眼鏡どうしたんですか?」
『先生みたいだろ。』
居間に入ると全員がこちらを見て固まる。
『…変?』
「いや…なんというか…良い…」
「おかしいアル…迦葉だと眼鏡掛け器にならないヨ…」
「迦葉さんと比べないでよ神楽ちゃん…」
よくわからないが好評らしい。
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作者名:逆叉 | 作成日時:2024年3月28日 22時