お控えなすって! ページ28
「消えるのは貴様らじゃ!」
『ここにあんたの場所はねェ。大人しく春雨にでも帰んな。…迎えも来てんだろ?』
「くっ…!」
遠くでこちらを見る気配。
大方春雨の資金を横領してこの町に逃げてきた、とかそんなところだろう。春雨を名乗っておきながら、その兵は1人も現れなかった。
不意に華佗が倒れ込む。後ろには、十手を持った銀。
『…あ。』
「兄貴…!」
「敵と相討ちなんかで!」
「お前の罪が消えると思ったら大間違いじゃビッチがァ!」
新八と神楽も揃った。
「だ、そうだ。さてどうする平子ちゃんよォ。…迦葉、お前はまた目ェ離した隙に抜け出しやがって。後でお話タイムだからな。」
『…はァい。』
平子が刀を落とす。
「私の役目は終わりました。後は煮るなり焼くなりなんなりと。」
「殊勝な事だ。いいのかい?親父さんとの決着とやらは。」
「もう着きました。親父を救ったのは兄貴達です。まさか親父まで護るなんて。」
この町の人間の姿に諭されたらしい。自分も、そうあれたらと。
「でももういいんです。…もう、帰ってきたから。」
泣きながら微笑んだ。
平子の行動の全ては父親である次郎長を愛するが為。道理で悪意を感じにくいはずだ。
「兄貴!皆さん!謝るなんて烏滸がましくてできないけれど、これだけは言わせてください!最後に親父に会わせてくれてありがとうございました!親父の娘にも、兄貴達の舎弟にもなれなかったけど、ほんのちょっとでも、この町の住人にしてくれたこと、嬉しかったです…」
頭を下げる平子に、銀が1枚の紙を落とした。
「そこに書かれた場所で待ってろ。傷が癒えたらきっちり落とし前つけにいく。…迦葉、こい。」
『…元気でな。』
平子の頭を撫でる。
銀に手を引かれ、病院へと戻った。
「お前は何回言えばわかんだ。その怪我は動いちゃいけねェの!」
銀に後ろから抱きしめられる形でベッドに座る。
『…くすぐってェからそこで喋んのやめろよ。』
「やめませーん。」
「…心配したんですよ。銀さんの腕の中でぐったりしてたから…」
新八と神楽がおれの手を握る。
平子に刺されたのは完全に油断だった。…妙な薬だった。
春雨ならともかく、抜けた華佗にそんなものを用意できたのだろうか。…なんでわざわざ、おれに。
『…ぁ…ッ!?』
考え込むおれの耳に銀が息を吹きかけてきた。変な声がでて恥ずかしい。
「…とりあえず今は寝てろ!治せ!説教はその後だ!」
『眠れっかなァ…』
大人しく目を閉じる。
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作者名:逆叉 | 作成日時:2024年3月28日 22時