往時。 ページ11
屍の道を2人で歩く。
おれにはよくわからないが、刀の刃の部分は握るべきではないらしい。
そこらに落ちていた刀を拾う。
『…これ、大きい…』
「俺達が小さいんだよ。あんなもんばっか握ってたら手がズタズタになる。握れなくなるだろ。」
『そう…』
何度か襲われる度に、刀の使い方を覚えていった。
「ほら、迦葉、食え。」
銀から握り飯を差し出される。先程屍から2つ手に入れた。
並んでそれを頬張る。
『…銀、口に…』
「ついてる?取って。」
そう言われても両手で握り飯を持っていて手を使えない。
そのまま銀に顔を近付け、舐めとった。
「ば、馬鹿何やってんだ!びっくりするだろ…」
『…顔、赤い。…大丈夫?』
「…迦葉のせいだから。」
「屍を喰らう鬼達が出ると聞いて来てみれば…君達がそう?」
突然見知らぬ男が声をかけてきた。そいつはおれ達の頭に手を置いて笑いかけてくる。
「また随分と可愛い鬼がいたものですね。」
黄緑色に覆われた不思議な人。…腰には刀。危険だ。殺される前に殺さなければ。
飛び退いて刀を引き抜く。
「迦葉、離れるなよ。」
『…うん。』
「それも屍から剥ぎ取ったのですか?童子2人で屍の身ぐるみを剥ぎ、そうして自分たちの身を護ってきたのですか。大したもんじゃないですか。」
…笑っている。刀を向けられて、なお。
「だけど、そんな剣、もう要りませんよ。人に怯え、自分を護るためだけに振るう剣なんてもう捨てちゃいなさい。」
腰から刀を抜き取り、おれ達に投げてきた。
「えっ?わ、」
『…重…』
どうにか2人で受け止める。そこらに落ちてるのとは違う、なんだか綺麗な刀。
「くれてあげますよ、私の剣。そいつの本当の使い方を知りたきゃ、ついてくるといい。これからはそいつを振るい、敵を斬るためではない。弱き己を斬るために。己を護るのではない。己の魂を護るために。」
おれ達に背を向け歩き始める。
『…今の手、あったかい…』
「…迦葉、いくぞ。」
先程触れられた自分の頭を触っていると、銀がおれの手を握った。…あったかい。
共にあの人の大きな背を追いかける。
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作者名:逆叉 | 作成日時:2024年3月28日 22時