【ヒソカ】伸縮自在に恋をしよう２ 【HUNTER×HUNTER】

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Aの母堂が、寮での共同生活をボクとキルアに尋ねたのが発端だった。

ちゃんとやってるという姉弟の主張をはねて、彼女は「客観的な意見が聞きたいの」と言った。

いつも台所に立って、ボクたちの食事を一生懸命作ってくれるAがいるから、美味しいごはんを食べられることに、Aと結婚して家庭を築く夢を何度見たことか。

「Aがお嫁に欲しいです♢」

抱いていた素直な気持ちを軽く言うと、Aの表情が固まった瞬間をボクは見た。

キルアが相槌を打ちかけて、

「おいヒソカ、なんて言った？」

「だから、ボクのお嫁に欲しいなぁって♡」

スローモーションのようだった。Aがカレーを食べていたスプーンが、羽毛のように床に落ち、金属音を立てた。

目の焦点が定まっていない彼女が、どこか体調でも悪いのかと心配になって、伸ばした手が偶然ほっぺたに触れた。

焼けた鉄のように熱かった。

それから、Aはあっという間にダイニングからいなくなった。

ミトさんが止めるのも振り切って。

ボクは少なくともAを褒めたつもりだった。本音が漏れたのはボクとしては計算外だったけれど。

ミトさんは、Aが駆け上がっていった階段をしばらく見つめていたが、やがて食べ終わった食器を片付けだした。

「あの、ボク……Aの気に障ること言っていましたか？」

皿を洗うのを手伝いながら、ボクはこっそりミトさんに聞いてみた。

「ん？ああ、きっとお嫁に欲しいって言われて、驚いちゃっただけよ。じきに降りてくるわ」

エプロンをざっくり着るミトさんが、料理を始める時のAの姿に重なって、ボクは胸が締め付けられた。

ああ、この人たちは紛れもなく母娘(おやこ)だ、家族だ。

ほっぺたに触れた時のAの怯えた表情は、ボクに突き刺さる杭になった。

あれほどボクに怯えた表情を初めて目の当たりにして、ボクはどれほどAを愛しているかを思い知った。


ずっと、笑顔でいて欲しい。そうして、Aがこの先の人生で歩む道を願わくは自分も共に歩みたい。

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