72.限られた時間 ページ32
.
ギュっと手を握られ、累から告げられたそんな突拍子もない台詞。"嫁"という単語が数回エコーで自分の頭に流れて、その数秒後やっと言葉の意味を理解した。
「…よ、よよ、嫁!!?」
「煩い」
「えっ、だって嫁ってあの嫁?唐突!!」
一人でぎゃーぎゃー騒ぎ立てる私を見て、"うるさい"という意を深く大きな溜息を表す累。
…あれ?なんで??私がおかしいの????
「大丈夫だよ、君のことは鬼にしないでおこうと思ってる。顔も変えない」
「あの」
「母さんや父さん、兄弟だっているからきっと寂しくないよ。なにより僕がいる」
「るい」
「君が隣でさっきみたいに話をしてくれれば、何か思い出せそうな気がするんだ。だから」
君は側にいてくれるよね?
そう言い切り、瞬間握っていた私の手に力を込める累。ミシミシと鈍い音を立てて骨が鳴る。その行動には、断ったら骨を折るという意図が嫌でも感じられた。
累がいきなりヤンデレ化したー・・・結婚申し込まれるとかまじか。どうしよう可愛い好き。そういえば私鬼に好かれる体質だったっけ・・・。
完全に忘れられていた設定を思いだし、うんうんと縦に頷く。
「ねぇ、いいでしょ?」
首を傾げ下から見つめてくる累に心臓が鳴った。キュンなんてものじゃない、ギュンだ。良くある胸を押さえて病院に運ばれるネタのやつだ。
やっぱり漫画でもアニメでもない本物は最高だね!
でも、だからこそ
「少し考えさせて!欲しい!」
「なんで」
私の返しに累は眉を顰め、掴む手に一層力が入る。
「…その話は凄く凄く嬉しいよ。でも私はこれでも鬼殺隊で、ここですぐに肯定してしまったら色んなものが崩れる気がする。だから今すぐに返事は出せない」
「・・・・・・」
「あ、でも累のことは本当に好きだし!愛してるしっ!なんならもう存在全てが好きだからね!」
「すき……」
再びじっと私の瞳を見つめ、数分後観念したように累は私の手を離した。
私は赤くなっている手を見ながら思う。
私はこの世界にトリップしたいわば異世界人だ。鬼滅の刃の世界に来て、私が物語を変えすぎるのはタブーなことだと思っている。なにより累は鬼、鬼殺隊に入ったからには鬼側にはつけない。ついてはいけない。
だからこそ、苦しいのだ。あの分かっている未来にそのまま進むのは。
「分かった、少しだけ返事を待つ」
「・・・うん、ありがとう!」
この限られた時間を、大事に。
3458人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うえ - んぎゃ..鬼にまで好かれるとか最高すぎんか..待ってます!! (1月5日 9時) (レス) @page36 id: 9aa429e4c8 (このIDを非表示/違反報告)
さめしゃち?(プロフ) - あっ好きです(急)結婚しましょu(((((( すみません取り乱してしまいました^ ^めっちゃにやにやしちゃいましたww更新待ってます!!!! (2023年5月7日 21時) (レス) @page36 id: 94eab444ed (このIDを非表示/違反報告)
Komachi(プロフ) - ふづきさん» あ、へ?え!?なんか褒められました!?あざさです!(?)めっちゃ嬉しいです!(なんのことかよくわかっていない件について) (2022年3月6日 1時) (レス) id: 286de14237 (このIDを非表示/違反報告)
ふづき - Koma?♂さん» がちでおもしろすぎるww文書く才能ありすぎです (2022年3月6日 0時) (レス) @page36 id: 3d9c5132e5 (このIDを非表示/違反報告)
Koma?♂(プロフ) - ぁぁダァダダァぁ!好きです!もうこういうのをまとめてました!更新頑張ってください!応援してますぅ (2021年11月3日 22時) (レス) @page36 id: 286de14237 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:むにゃねこ44 | 作成日時:2019年8月13日 2時