【d！】【短編集】恋愛カルテ (ページ5)

今日:6 hit、昨日:32 hit、合計:76,910 hit

→NEXT ページ5

「んむぅ、でもトントン、さっきのは酷いで？私も女の子やで？」

謝ってもいないのにちょっと戯れただけ、では許せない。いや、怒ってないけど、その分なんかしてくれてもよくない？プンプン、とでも効果音が出そうなくらいに腕を組んで軽く睨むと、トントンがはぁ、とこれ見よがしにため息をつく。

「我儘やなぁ…ごめんな、もうせんから」

「へー、そうですか、ふーん」

仕方ない、とでもいう様に適当に謝ったトントンに、冷たく反応する。そんな適当で勘弁してやるものですか、ちゃんと見合うものくれないとね。まあ、怒ってはないんですけど、ね。

「しゃーないなぁ…ん、目ぇ瞑っとき」

困った様に眉を下げて苦笑いするトントンに、ちょっと不満を持ちつつも、大人しく目を瞑る。流石にここでキスは無いだろうな、なんて思いつつ、ちょっと期待してる自分がいて、悔しくなる。人前でのキスは…ちょっと恥ずかしいけど、トントンなら別に、とも思わなくもなかったりしたり。

そんなことをごちゃごちゃ考えながらジッとしていると、周りがシーンと静かなことに気づく。まあ、キスか…？ってなるよね、私もたぶん同じ状況ならしてた。

ぎゅうぅ、と、前から抱きしめられる。普段、トントンから抱きしめられるなんてことほとんど無くて、少しびっくりする。え、キスじゃ無いんだね！？とも思ったけど、目を開けた瞬間に見える、トントンの真っ赤な顔に、何も言えなくなる。

「す、すまん、キスはやっぱり恥ずかしかったんや…。これで許してや…？」

小さく、私だけに聞こえる様な声でそう言ったトントンは、そのまま私の肩に顔をうずめて大きくため息をついた。可愛いなぁ、なんて思う私は、とことんトントンが好きなんだろう。そんなトントンの頬に、軽く唇を掠めさせる。

「！？！？」

「これで許したげる」

口でのキスは、まだまだ先になりそうだけど、頬にキスするくらいは、慣れておきたいな。