【d！】【短編集】恋愛カルテ (ページ39)

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心臓が、どきっと音を立てた。ロングヘアの女の子は、俺に見られていることに気づいたのか、顔を真っ赤にして、こっちに手を振ってきた。なんて初々しいんだろう、そして…。

「後の、向こうの席にいるロングヘアの子可愛くない?」

隣にいるチーノに耳打ちをし、、彼女たちの方を指す。もちろん、他のお客さんにはバレないように。知恵の輪、これまたバレないようにキョロキョロと席を見渡し、彼女のいるあたりで目を止めた。

「確かに、大先生の好きそうなタイプの子ですね。しかも、そこら辺にいるような美女って感じでもない。」

にやっと、何かを考えついたかのように、チーノらしい微笑みを浮かべる。さすがやな、俺の思考をよく分かっとる。

そう、そのロングヘアの男の女の子俺の好みにバッチリで、珍しいことに…一目惚れしてしまったのだ。なんとなく、遠目で見るに、化粧が下手なのが見て取れる。少しだけ崩れているが、それでも元の顔の良さはごまかせるはずもなく、普通に歩いていたら騒がれるであろう美貌が輝いている。こりゃ、このライブを当たりやな。えー…と、今日は確か握手会があるから…。

俺は、あの子を手に入れるべく、ライブが終わった直後に、2人にある計画を話した。

「ーーちゃん、今日も来てくれたんやな!」

「あ、今日の服かわいいなぁ!」

流れるように入ってくる女の子に、喜ぶであろう言葉を投げつける。乱暴な言い方やけど、ちょっと強引の方が、ほとんどの女の子が喜んでくれる。…いつもは、男たちが俺に好意を持てるよう、最大限の敬意を払って接しているが、今日は違う。…あのロングヘアの子まだかなまだ見えへん…。

「大先生。」

ぼんやりと、目の前の子に声をかけていたら、チーノがこちらに目配せをする。それにつられて、女の子たちの長蛇の列の先を見ると、さっきの、ロングヘアの女の子と、その友人であるショートカットの女の子がいた。上、珍しく俺緊張しとる。こんなに女の子に真剣になるの、久しぶりかもしれん。