【d！】【短編集】恋愛カルテ (ページ37)

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「…ほっ、と。」

音を立てないように部屋に入り、額に浮かぶ汗をそっと拭く。ほんまな、看病とか普段せんから、やり方が合ってるか分からんのやけど…。冷えた手を頬に当てて、少しでも体温を下げてあげようとする。今日だけは、冷え性に感謝するわ。

そんな俺に、起きてしまったのか、Aがもぞもぞと体を動かし、ほんの少し目を開けた。ほわっと頬を緩ませ、俺を見て目を細めたA。どうしたんや、そう伝えようと思って頭を撫でると、Aがぽわぽわしたような表情で口を開いた。

「…おか、さん…。」

「ちゃう！！！俺は彼氏や！！！！」

ぼんやりしてるせいか、俺を母親と勘違いしたAに、思わず大声で返してしまう。…大声で彼氏宣言してしまったことに、羞恥心で嫌になってしまう。いや、彼氏、やけど。なんか気恥ずかしいから、普段あんま言わんようにしとるんや…。

俺の言葉にびくっ、と体を震わせたAは、その衝撃からか、目をぱっちりと開いたA。…ほんと、すまん。起こす気はなかったんやけど。改めて俺に視点を合わせたAが、これまた改めて口を開いた。

「ありがと、彼氏さん。」

にへ、と、幸せそうに笑ったAに、心がきゅうっとして、また、恥ずかしくなった。