【d！】【短編集】恋愛カルテ (ページ36)

今日:28 hit、昨日:32 hit、合計:76,932 hit

母じゃなく、彼氏。～tn ～ページ36

「ごほっ、ごほっ、ドン、ドン…。ぐるじい…。」

脳内に、泣きそうになりながら咳き込むAの顔が浮かぶ。布団を抱き締めて顔を真っ赤にした、苦しそうなAを思い出し、ため息が出る。チン、と音がして、レンジがその存在を主張する。煩いな、この電子機器。A起きてまうやろ、やっと寝付けたんに…。

朝、今日の撮影のことをLINEしたら、熱出た、って一言だけ。…心配になるやん、普通。いつも元気で、シッマとロボロと3人でギャンギャン言ってるAが、やで？ラインきた瞬間、財布とスマホだけ持って家を出た。念の為、薬と、温めるだけっていうむっちゃ便利なお粥と、冷えピタを買って、( 名前)の家に走ってきたはいいものの、部屋にいたAは、俺を見つけた瞬間、ぼろぼろと涙を流した。

なんで泣くんや！？って、困惑したのも束の間、俺の手をグッと握って、苦しい、苦しいって言われたんや。しゃーないから、なんとか寝付かせて、今はお粥作っとる。…作れないわけじゃないんやけど、出来るなら一瞬たりとも離れたくない。なんや、こう…自分で言うのもやけど、彼氏として、な。…苦しんでんなら、そばに居てやりたいし。っほ、ほら、誰やって好きな子とか、大事な子が大変な時は一緒にいてやりたいやん！？な！！そう言うことや！な！！

「これでええんか…？」

お粥をレンジから出し、僭越ながらスプーンを借りて、一口食べてみる。いやぁ、不味いな、そりゃそうやろうけど。そこまで熱いわけやないし、Aが起きる頃には多分冷めてるやろうし、俺が使ったスプーンじゃないスプーンを持って、Aの元へ戻る。

→NEXT→←→NEXT