→NEXT ページ4
「会って…どうするんだ？」
擦り切れるような、掠れた声。涙は出ていないけど、まるで泣いているかのような声。それも、とても下手な泣き方の。子供みたいに顔を歪めて、心の中をぐちゃぐちゃにして、彼はきっと苦しんでいる。大丈夫、そう伝えるのは簡単だけど、それはきっと間違っている。私が許しを与えて仕舞えば、彼はもっと苦しんでしまう。小さなすれ違いから起こった事件に、私も彼も疲弊していて。
「さぁ…どうしましょう。」
それをそっと慈しむように、どうにかして癒せるように。柔らかく笑う。どうするのか、そんなことわからない。私が戻れば、彼はきっと喜んでくれる。それはもう、想像がつかないくらい。きっと私を大切にしてくれる。馬久留と違って、私を私と認めてくれる。だけど、私が好きなのは馬久留。…私は、太陽さんと会ってどうするんだろうか。
「藍美。」
優しい優しい、馬久留の声。真横にいる馬久留の声は、とても懐かしい響きだった。出来損ない、そんな言い方でもなく、虚な言い方でもなく、さっきまで目の前のそれに向けられていた言い方でもない、“藍美”を呼ぶ言い方。その呼び方にはっとして、でも私じゃないだろうと思って。でもやっぱり。ほんの少しの課題を込めて、馬久留の方を向くと、彼はー…。
“私”を見ていた。
「もう少し、付き合ってはくれないか？」
穏やかなその瞳が、光を取り戻して、私を見る。スワンプマンである私を。
平太さんのように、困っている人を助けられるようになりたい。
春さんのように、誰かのために真剣になれる人になりたい。
ミミさんの様に、自分の信念を曲げない人になりたい。
太陽さんのように、強くて、優しい人になりたい。
「はい。馬久留がそうして欲しいのなら、私はいつまでも。」
きっと彼はー…私を待ってくれている彼は、もしも同じ立場だったら、こう答えると思うから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 271人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鈴華(プロフ) - 目玉焼きさん» ありがとうございます〜！好きって言ってもらえるとやっぱりモチベ上がるので嬉しいです！更新は亀ですがお付き合いください…！ (2022年4月1日 15時) (
レス) id: a228d6db47 (このIDを非表示/違反報告)
目玉焼き - コメント失礼します遅れましたが続編おめでとうございますこの短編集すごく好きでしてこれからも頑張ってください応援しております (2022年3月27日 18時) (レス) id: 81c89ca802 (このIDを非表示/違反報告)
一月鈴華(プロフ) - モカブラウンさん» ありがとうございます！！今後も頑張っていくのでよろしくお願いいします。 (2021年2月20日 15時) (レス) id: f7d3b28b6f (このIDを非表示/違反報告)
モカブラウン(プロフ) - 続編おめでとうございます！ これからも更新頑張ってください！！！応援してます！ (2021年2月20日 14時) (レス) id: e467f9631d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
