初恋ざぼん。(tk×in♀) 2

kei. 1 ページ8

kei side.




「初恋の関係は、距離と時間によってすぐ崩れてしまうもの。」


「恋をすると人間は盲目になる。
　初恋はなおさらだ。」



あの頃は嘘だ、と信じていなかったが今となっては、

…その言葉も正しいんじゃないか、と思う。



私はふう、とため息をついて、紅茶をすすった。


夜にしては目と脳に刺激を与える、強い光。

それを放つ私のスマホが、その言葉を何よりも証明している。


〈明日デート、しよ。
　何時頃、空いてる？〉


東京に来て、3年と6ヶ月。
1年ほど前から付き合いだした彼氏、裕翔からだった。


私はその強い光に、少々面食らいながら


〈明日は18時からだったら、大丈夫。〉


と返事した。


スマホを置いて、目の前の重々しい医学書に目を通す。

小さな文字を目で追っていても頭がそのスピードに追いつかない。

それほどに私の頭の中は、眠気でいっぱいだった。


今日は、もう寝よう。
紅茶に含まれているカフェインなんて、効き目がなかったようだ。




雄也との別れを悲しむ余裕がないほど、あれから時間があっという間に過ぎていった。



大学受験の勉強も、もちろん忙しかった。
けれど、予想以上に入学した後の方が、忙しかったのだ。


現役で医学部に合格した喜びに浸って、大した下調べをすることの無いまま入学した私は、苦戦した。

トップになる必要はないが、気を抜くとすぐに一番下になって、ついていけなくなってしまう。

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