初恋ざぼん。(tk×in♀) 2

kota. 28 ページ6

〈ごめん、もう会えない。〉

俺は光る画面をタップし、そう返事を返した。
そのまま画面は既読がつき、返事は来なかった。

自分はその程度の存在だったのかと思ったが、それをまたありがたく思う、自分もいる。

むしろ、そうで無くては困るのだが。




そのまま、光の連絡先をタップする。

まだ何も書かれていない空白。
ただ青空だけが、その画面を埋め尽くしていた。



記念すべき一言目は、何にしようか。



〈もう着いた?〉

ではあまりにも能が無さすぎる。
今日中に光は，島にたどり着くことはできないはずだ。


〈また、会いたい。〉


では単純で、露骨すぎる。
中学生の会話じゃあるまいし。
俺はそんなキャラじゃないと思う。


どうせ送るならもっとセンスのある、大人な言葉がいい。
お洒落、というか。
遊び心がある、というか。


そんなとき、目に入った。


「あ、れ？」



玄関を見ると、パーティーシューズがあった。その靴はまぎれもなくあの日、光が履いていたものだ。


忘れ物がないって言っていたくせに。
立派に忘れてるじゃんか。


パーティーシューズは玄関の外を向いて、静かに佇んでいる。
足首を固定するはずの紐は、くたっと形を崩している。

持ち主のいないその靴は、少し間抜けに見えた。



そうだ。
“時限爆弾”を送ろう。

光の言う、びっくり箱があのダンボールだとすれば、これから送るメッセージは時限爆弾だ。


時間が経ってから、効果を発揮する。
俺たちにぴったり、じゃないか。


俺は思いついた文面を文字に起こし、そのメッセージを光に向けて飛ばした。


〈 光。
　
　こんなに早くメッセージすることになるとは思ってなかった。

　たまたま思いついたんだ、ゲームをしよう。


　1つ、忘れ物をして行ったみたいだな。

　面白いから、当ててみろよ。

　分かったらメールすること。

　時限はあのダンボールが届く、明後日まで。〉


俺は満足げに、その文面を眺めた。

鶏飯より。→←kota. 27

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す