初恋ざぼん。(tk×in♀) 2

yuto. 8 ページ42

その日からはもう、2週間以上が経つ。


なのに、そのことが夜になるとフラッシュバックして、結局彼女を手の届くところに置いておきたくなるのだ。
　


束縛、とも言えるだろう。

自分でも怖く思う時があるが、そうせずにはいられないのだ。


彼女を失う根拠は、ない。
そうなることはない。


何度そう言い聞かせても、なおも押し寄せる焦りと不安。

それを彼女に見透かされそうになると、慌てて隠す俺。
その代わりに、強がって彼女を抱いた。
…何度も。






うつ伏せで寝るのが苦しくなってきたのか、慧 はまた寝返りを打った。


ベッドからはみ出た布団の端を、抱きしめている。
腕では優しく抱いてるが、手に強く握っていた。
羽毛の入った掛け布団は、そこに皺を作っている。



彼女はそのまま布団を引き寄せると、それに顔を埋めた。


「ゆう…。」


寝言、か。
彼女はその一言だけをぽつりと言うと、深い眠りに落ちていたらしく、その後何も言葉を発さなかった。


彼女が発した言葉は、おそらく誰かの名前だろう。
夢の中で、彼女の会う人。


ゆう、で途切れてしまった先、誰の名前を呼ぼうとしたのか。
それは本当に、俺の名前なんだろうか。





慧。
ちゃんと俺の名前、最後まで言い切ってくれよ。

ゆうと、の三文字ぐらい言えるだろ。
例え、寝言だったとしても、さ。




ぼんやりとした暗さの寝室。

その中途半端な暗さが気に入らなくて、俺は目を閉じ、眠りに吸い込まれていった。

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