初恋ざぼん。(tk×in♀) 2

yuto. 3 ページ37

そんな若いカップルのなかに、にこやかに食事をする老夫婦がいた。
彼らの間にはゆったりとして、和やかな時間が流れている。


あの余裕はどこから生まれるのだろう。

仕事で重役を担い、そこから出てきた責任感だろうか。
それとも働いたり貯蓄したりすることで出てきた、金銭的な余裕だろうか。

それとも今まで連れ添ってきた奥様との、長い年月だろうか。


目の前に座る慧の頬に，赤みがさしている。

それは店内を照らす和風の柔らかい照明によるものか、出された少量の食前酒によるものか。

分かる術は無かった。
そんな慧に思ったことを、話しかけてみる。


「なんか良いよね。」


「ん、何が。」


「あそこに座ってる夫婦。

　年月が経ってもあんな風に連れ添って、仲良くしてるのって。
　日本は平和だなぁ、って思う。」


奥様が旦那さん人にお酒を注いでいる。
そのとっくりに両手を添えて、無駄のない動きでお酒がお猪口の中へと移って行った。


「ああいうの、憧れる？」


「うん、まぁね。
　大人って感じはするよね。

　慧は大人の女性、か。」


「すいませんね、年上で。」


「いや，そういうことじゃなくて。
　えーと、違うから、本当に。」


弁解をするまでもなく、次の料理が運ばれてきた。
さすが少し高いだけある。
味がきめ細やかで、美味しい。


だが。
いつもなら美味しそうにご飯を食べる慧は、今日少しだけ表情が陰っている。

楽しいはずのクリスマス。

何かあったのかと聞けば、別にいいやとはぐらかされた。
それでも気になって聞いてみれば、慧はこんなことを言った。

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