初恋ざぼん。(tk×in♀) 2

ryosuke. 9 ページ32

きりっとした寒さの中を、雄也先輩と並んで歩く。



ほろ酔いの、雄也先輩。

隙と人の良さが、いつもにもまして滲み出ている。

雄也先輩の後ろをかすめる風が、美容室の薬品
に混じって、大人っぽい香りがした。
雄也先輩の、匂い。


「雄也先輩はなんか、ないんですか。
　そういうの。」


「そういうのって。」


「彼女とか、です。」


いないよ、と即答する雄也先輩。


…未だにそうなのか。
　こんなに人の良さそうな人が、なぜ。


「雄也先輩モテそうなのに。
　というより、実際モテてるじゃないですか。」


バレた?と茶化す、雄也先輩。
先輩は足元の冷えた空気を、小さくボールのように切り上げた。


この調子じゃいつまで経っても、はぐらかされてしまうだろう。

今日くらい、真相を知りたい。
俺はそう思って、少しだけ強気に聞いてみた。


「なんで彼女、作らないんですか…？
　前に雄也先輩の彼女説で盛り上がってたアイツ、心配してましたよ。」


夜道に、靴音だけが響く。


いらんこと、聞いちゃったかな。
雄也先輩を、怒らせてしまったのだろうか。




酔ったせいにでもしようと思った矢先、雄也先輩がポツリと言った。


「あんまりそこまで好きにならない、というか。
　何か付き合う、までいかなくて。
　気持ちが。」


「真面目すぎるんですよ、雄也先輩。
　もっとフランクに行っちゃえばいいのに。」


「いいな、と思った子もいるよ。
　いるんだ、けど…。



　なんかその度に、元カノの顔が出てきてしまって。」

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