【d!】さよならばいばいまたあした (ページ4)

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かの我々帝国の重臣、トントンは頭を悩ませていた。
ちらりと横を見やると、どこまでも清潔そうな黒髪が靡いて、トントンはごくりと息を呑んだ。

美しい漆黒のロングヘア。そこから覗く白く、陶器のような肌には、高い鼻そして切れ長の目。口の横にある小さな黒子(ホクロ)が女性の色気を醸し出している。思わずたじろぐほど冷徹な雰囲気を纏っていて、立場は己が圧倒的に上だというのに緊張からか手が震える。

つい先ほど顔を合わせ、最低限の挨拶を済ませてからは、無表情のまま一言も話さない。彼女はトントンの後っろをただついてくる。何を考えているのか。同僚の顔を思い出し、奴ならわかるのだろうか、と考えてみる。

一応、トントンは一国の重臣であり、戦闘においても無論強いわけだが、背後をついてこられるというのは危険性がともなう。ただ、言葉で表現できないほどに重い空気間の中、今更それを口にする度胸はなかった。

トントンをそこまでさせる冷酷な美女の名は、A＝ローズ。
かの国の元重役幹部、リリィ＝ローズの実妹であった。

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数年前から隣国で教師として働くAが、後宮に来たのにはわけがある。

リリィ＝ローズが処刑されたからだ。

遺品の回収に来たAは、心中穏やかではない。

このトントンと言う男も偉大なる書記長であり、姉の処刑に大きく関係している人物のひとり(・・・・・・・・・・・・・・・)だからだ。

紛れもない、処刑は彼の手で行われた。

だからこそAは愛するリリィの為に、最後まで国に従順であると決意した。

姉が命を捧げて敬愛し、身をもって散ったこの国に。

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