二つの弾丸に引き裂かれ ページ33
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現在、時刻は朝の10時である。
俺は安室こと降谷零の運転する車に押し込められていた。アジトに顔を出そうとしたら、何故かこのザマだ。事前に俺の動きを察知していたかのようなタイミングでセーフハウスの前に現れた降谷は、馴染みの顔に振って応えた俺の利き腕を見て眉間のシワを三倍ほど深く刻んだ。元々良さそうに見えなかった機嫌が見る見るうちに最低ラインまで達するのを目撃して、その後の彼の行動には早々に逆らうのをやめた。そしてやめなければ良かったと後になって後悔した。
知り合いの闇医者に、強引な処置ではめ直してもらった肩関節は、少しの衝撃で外れやすくなっている。無理して動かさないようにと念を押されたほどである。それをこともあろうにこの男は無遠慮にぐい、と力いっぱい引っ張ったのだ。癖がつくとくしゃみをしただけで外れるという。俺の場合脱臼してからすぐに処置を行わなかったため、特に固定用バンドの装着とリハビリを勧められていた。平気平気と笑いながら断った数時間前の自分を殴ってやりたい。この暴挙によって俺の肩関節は案の定簡単に外れた。
それから車の後部座席に押し込まれた俺は、行先も伝えられないまま彼自慢の愛車のシーツに身体を沈めている。この上司怖い。
赤信号で止まる度ルームミラー越しに威圧感が襲う。ちょっと言葉足らずなだけで部下思いであることは知っているが、果たしてそれは俺にも適用されているのだろうか。未だに解明されていないミステリーだ。
しばらく国道を走り抜けたあと、車が止まったのは大きな病院の前だった。車から降り、目の前に聳える大きな建物を間抜け面で眺めた俺に何をしている、と声が掛かる。降谷は顎でくいっと病院を指し、着いてくるよう促した。
まさかとは思っていたが、このためにわざわざセーフハウスの前で俺が出てくるのを待っていたのか？ どうやらまともに治療を受けるつもりがないことを見抜かれていたらしい。いや、でも多忙なんだから、俺一人に時間を割いてしまわなくていいのに。院内に入ろうとした降谷を呼び止める。
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作者名：タイガ | 作成日時：2023年8月28日 20時
