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「あなた……ライにもあのベビーフェイスにも仕事を取られて、悔しくないの?」
「え? 何で?」


 当然のように返されて、こちらがおかしな事を言っているような気になる。スプーンに乗せたオムライスを頬張りながら、スコッチは不思議そうに首を傾げた。


「何でって……普通はあるじゃない。嫉妬とか、焦燥感とか」
「そりゃあ、ライに対しては多少思うところはあるさ。でも悔しいかって聞かれると、それはない」


 きっぱり断言してみせた口が、次の一口を飲み込む。何度か咀嚼した後、スコッチは再び口を開いた。

「寧ろ、心強いな。うん。二人がいてくれて良かったと思う」


 他の連中がライや安室に向ける、諦観の目とは全く違っていた。淀んだ瞳とは比べ物にならないくらい清涼な色が、柔らかな光を浮かべて笑っている。ベルモットには全くもって理解し難い。スコッチは高みを見上げて走ることなく、かといって地面を見つめて歩くこともせず、着実にのし上がっている。野望も失望もなく、機械的に、けれどどこまでも人間らしく。それが少し不気味だ。

 あんなに凄い奴らなんだ。俺がいなくても大丈夫。
 あとに続いた言葉を、ベルモットが聞き取ることはできなかった。




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作者名:タイガ | 作成日時:2023年8月28日 20時

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