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さんざん前線に投入され続けていたこの男は、その実狙撃手であった。その実力は昇格試験よろしく提示された仕事を完遂した事で見事証明されたが、彼がスナイパーとして仕事をすることはほとんど無かった。如何せん組織にはすでに腕利きのスナイパーが居たのだ。そうなればより確実な方に狙撃の仕事が回るのは極自然なことである。それは彼自身も納得しているようだ。
元々出世欲や自己顕示欲が希薄なためか、僻んだり妬んだりする様子も見受けられない。自分に与えられた仕事を忠実にこなしていた。そう、ついこの間までは。
狙撃を奪われたスコッチが初めに受けた仕事は、取引の交渉人だった。だがこの仕事は、すぐにジンによってせき止められることになる。スコッチはナメられやすかったのだ。アジア系特有の童顔からか、物腰の柔らかさからか。組織としての取引としても、それを軽視されることが度々あった。その度にスコッチが機転を利かせて提示額以上の好条件で取引を成立させたが、甘い汁を啜ることができたのは一度だけ。顧客となりえた相手が、たった一度の取引で二の足を踏んでしまう事態が後を絶たなかったのだ。結局別の人間が後を引き継ぎ、仕事を取り上げられたスコッチは軽くショックを受けたらしく、俺ってそんなに怖いかなと顔を覆っていた。蟻だと思って近づいたら象だったなんて、誰でも怖いに決まっている。
二つ目の仕事は、情報収集だった。組織にとって利益になる情報をあちこちから集めてくる、重要な役割だ。これはそつなくこなしていたようにおもう。ただ、最近はその手のスペシャリストが組織に加入したことにより、これもまたより腕の立つ新人に回される事になった。
残った仕事といえば、組織にとって存在が不都合だったり、邪魔になった拠点や情報を処分することくらいだった。
手頃な場所で昼食を共にしている男に、ベルモットはジト目で問いかけた。
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作者名：タイガ | 作成日時：2023年8月28日 20時
