人生リセットボタン2【スコッチ】 (ページ28)

今日:8 hit、昨日:7 hit、合計:1,613 hit

ページページ28

･

　ライに連絡を入れようとした矢先、サブディスプレイが着信を知らせた。親指を挟み込み、二つ折りの携帯を開く。応答ボタンを押す際、ちくりと視線が背中に刺さった。背後では、開け放たれた扉の向こうに安室が立っている。無言の圧に急かされ、受話口を耳に当てながら部屋を出た。

「……はい」
『無事でなによりだ、スコッチ』

　幾分柔らかい声が耳に染み入る。開口一番に労いの言葉を投げかけられて、うっかり涙が出そうになった。無事というには幾分重症な気がするが、そこは置いておこう。

　視線を廊下の先に向けると、足早に歩いて行った安室の姿が見えなくなる。部屋に荷物を取りに行ったのだろう。ホテルの受付が閉まるまでまだ暫く時間があるので、それより早くフロントに届け出なくてはいけない。視線を落とすと青いパーカーが数か所、血で汚れていた。脱ごうにも片手は使い物にならないし、もう片方は現在使用中である。少々気が引けるが、不機嫌な安室に折り入って介護を頼み込むしかない。

「助かったよ、ライ」

　暗に狙撃の件を示して、礼を言う。電話の向こうでライが笑った。

『ようやく手に入れた協力者をみすみす逃す手はないからな』

　今のは彼なりのジョークなのだろうか。素直に笑い返した。そうしてもう一度、互いに労いの言葉を掛けて通話を終了させる。部屋についたら、まず顔を洗わないと。頬に触れると殴られた箇所が少し腫れていた。

･