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サプレッサーも取り付けられていない銃に視線を向けて促した。小枝村の親指が撃鉄を起こそうと動く。それよりも早くその右手首を左の手で掴み、肘の関節を外側から膝で抉る。先程自分の肩から聞こえたよりも酷い音が響き、痛みに耐えかねた小枝村の指が銃を取り落とした。短い悲鳴が、捩じ潰されたように引き攣る喉から零れている。折れただろうなと他人事のように思いながら、銃を遠くへ滑らせた。
締め切られていた背後のカーテンを左手で開け放ち、痛む肩を抑えながらゆっくり立ち上がる。コンコン、と部屋の扉がノックされた。すぐに警戒を引き締める。
「隣の部屋の者ですが……何かありましたか？」
聞こえてきた声に一気に緊張が抜けた。確認するまでもない。ドアノブに手をかけて扉を開けると、見慣れた双眸が覗いた。安室だ。隣なんて距離じゃない部屋から駆けつけてくれたのだ。
顔を合わせるなり見開かれた目が己の惨状を伝えてくる。眉間に深い皺を刻んだ安室は、何か言いたげに薄く口を開いた。まさかタバコ買いに出ていった男が、短時間でこうも怪我を負っているとは思ってもみなかっただろう。ま、脱臼くらい荒療治ではめ直せばすぐだ。そのはめ直す瞬間が、めちゃくちゃ嫌なわけだが。
「大したことない」
そう言って口角を上げる。引きつった唇が痛みを訴えた。そういえば切れてたっけと指で触れる。まぁ生きてたんだからこれくらい安いもんだ。
俺から視線を反らした安室は、次に部屋の中央に目を向ける。使い物にならなくなった右腕を抑えて痛みにのたうち回る小枝村の姿がそこにあった。靭帯も切れてるだろうし、まともに動ける状態ではない。おおよそ事態を把握した安室が、ここに来た経緯を教えてくれる。
「ライから連絡がありました。メールを受け取って以降、電話をしても出ないと」
言われて床に転がっていた携帯を見やった。確かに着信を知らせるランプが点滅している。サイレントに設定していたため、誰も気づかなかったのだろう。小枝村が携帯を開いている時じゃなくて良かった。
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作者名：タイガ | 作成日時：2023年8月28日 20時
