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肩を竦めて、質問に質問で返した。これでまだ納得されないなら、ライは鏡を見たことがないのかと疑うところだ。先んじてライが求めているであろう答えをつきつければ、ホー、という声が聞こえた。ヒクリと顔の筋肉が誤作動を起こす。何度も耳にしたことがある、例のアレだ。確信に迫る言葉を聞いた時やいやなところを責めてくる時──いや汎用性が高いのでほかの場面でも使っているかもしれないが、とにかく何か良くない予兆である場合が多い。それを聞いて自分がなにか間違いを犯したことを察した。ライの口元が綺麗な弧を描く。罠にかかった獲物を歓迎しているように見えた。
「何故、子供を信用したのか。その疑問に対して、君はこう答えた。彼女は、俺の身内だと。似ているとよく言われるんだ。あの子が俺の血縁だろうと君が判断するのも頷ける」
囲われている。不意にそんな言葉が頭に浮かんだ。俺を中心において、逃げ道をなくすように言葉を埋めていく様に、恐怖すら覚えた。そうして閉じ込められた俺は、何も言えずに次に下される言葉を待つしかない。
確実なのは、俺が何かを間違えたということだけ。
「よく言われるんだ」
まるで犯人を追い詰める探偵のようだと、他人事のように思った。多分、もう何を言っても手遅れなんだと諦観しているのだろう。以前にも感じていたが、ライを相手に頭脳戦なんて分が悪い。他の部分で相手取って勝負になるとも思えないが。やめておけよ、と既に過去となった自分に呟いてみた。一種の現実逃避だ。
ややあって、ライは俺に止めの言葉をつきつけた。
「可愛い弟さんですね、と。……なぁ、スコッチ。あの子が妹だと何故わかった？」
思わず息を詰まらせた。
ライの妹は兄に似て秀麗な顔立ちをしている。中性的な顔立ちとボーイッシュな言動や所作で男の子に間違われるのが多いと、ライ本人から聞いたことがあった。現に俺が初めて彼女にあった時も、可愛い弟さんだな、とライに言った。微妙な表情で、妹だと告げられた時は俺も絶句したと思う。だがそんなものは遠い昔の記憶だ。そんなこと、今言われてやっと思い出したくらいだ。女の子だと言われればそれはそれで違和感はない。ライには妹がいる。その事実だけが俺の頭に残った。だから今日、彼女を一目見た時、疑うことなくライの妹だと認識したのだ。かつての行動とそう変化はなかった。ただ一点、俺が「知っていた」ということをのぞいて。
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作者名：タイガ | 作成日時：2023年8月28日 20時
