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ライの声色が変わった。言葉を選びながら喋っていた先程までとは打って変わり、虚をつかれたようなそんな顔をしている。何か、見当違いの答えに行き着いたような顔で、顎から僅かに外れた手をそのままに視線が動く。その目は、僅かに見開かれたまま俺を捉えた。徐々に確信めいた光を帯びて、目が細められていく。そうしてようやく言葉が続いた。
「……昼間の件だが、何故隠していた？」
「昼間？」
「俺の後をつけていた子供がいただろう」
「あ、あぁ」
突然話が切り替わり、整理の追いつかない頭で昼間のことを思い出す。そういえば、あの少女の件に関して、ライからの言及がないままだった。今更その話を、このタイミングで持ち出してくるかとつつきたいところだが、薮をつついて蛇を出したくないのでライに従うことにした。
「駅のホームで見かけたんだ。目が合うと言わないでくれとジェスチャーされたから、ついつい聞いてしまった」
「これから仕事だって時に、軽率な行動だったな」
「それについては同意するよ……自分でも迂闊だったと思う」
「子供をスパイに使う奴らもいる。君だって知らないわけじゃないだろう。その可能性を考えない君じゃないだろうに。何故従った？」
やけにつっかかってくるライに引っかかりを覚えた。言い知れぬ不安が身体中を纏う。まるで何かに誘導されているようだ。その真意を探るべく、答弁していた口を閉じた。子供のお願いを聞いた理由を追求されているのか──いや、その子供を信用した理由について聞き出そうとしているのだろうか。そうだとすれば、答えはひとつだ。その子がライの妹だと知っていたから、だ。だが、それを聞いてどうする？不自然な点はどこにもない。それほど二人はそっくりなのだから。身内じゃないと思う方が不自然じゃないだろうか。
「……いまいち、要領を得ないな。何が疑問だ？ 理由は明白だろ。彼女は君の身内だ。誰だって、見ればわかると思うが、違うのか？」
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作者名：タイガ | 作成日時：2023年8月28日 20時
