夏のあの日 3 ページ42
片手に2本ずつ持った花火をあたしの方に向けてくるものだから、思わずびっくりした。ゆづくんに追いかけ回されて、それが何だかおかしくてけらけらと笑ってしまう。
「やっとちゃんと笑った」
「えぇ？」
「全然楽しくなさそうなんだもん」
「…そんなことないよ！」
ゆづくんに、変な気を遣わせてはいけない。そう思ってあたしも4本の花火を手に取る。だけれどゆづくんはそれを許してくれなくて、2本に減らされてしまった。
「お前に4本は超危険。」
「何でよ！ゆづくんばっかりずるい！贅沢！」
「俺が買ったから俺はいいのー」
「ひどい！」
ぎゃあぎゃあ言い合いながら次々と花火に火をつける。腕を振り回したりその場で回ってみたりと二人ではしゃいでいたら、あっという間に最後の花火になってしまった。
「俺優しいから、Aやっていいよ」
「それ言わなかったらかっこよかったのに」
「じゃあ俺やる」
「やだ！」
最後の一本を手に取り火をつけると、しゅわぁと音を立てて綺麗な灯りがあたしとゆづくんを照らす。ふと、もう終わってしまうんだと思ったら一気に悲しくなって、ぽたぽたと弱くなっていく花火のように気持ちもしぼんでしまった。
「最後はやっぱ線香花火だよね」
「うん」
「はい、これAの分」
「ありがと」
「最後の一本になったら勝負ね。先に玉が落ちたら負け。勝った方のお願い何でも聞くこと！」
「出た、ゆづくんそうやって必ず勝負事にするんだから」
「その方が楽しいじゃん」
ぱちぱちと弾ける火花を見つめている。一つ、また一つと落ちていくそれに、落ちないでと願いをかける。これが終わったら、ゆづくんとの時間も終わってしまうから。
「え、お前もうラス1？」
「ゆづくんまだ？」
「俺あと3本あんだけど。これはもうもらったな」
「こっからが本番だもん！」
「はいはい。ほら、1本やるから」
やっぱり優しいゆづくんに思わずにやけてしまう。こんなに好きになってしまって、離れたらあたしはどうなるんだろう。行き場のない想いをどこにぶつければいいのだろう。
「よし、じゃあ最後。いくよ」
「うん」
勝負なんてどうでもいい。この時間が続いてくれればいい。だから、どっちの玉も落ちないで、そんな叶うはずのない願いを心の中で唱えながら、じっと線香花火を見つめた。
「あ、」
「え？」
ぽたりと無情にも落ちた玉は、ゆづくんの線香花火だった。
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はなこ(プロフ) - るりさん» 初めまして！コメントありがとうございます！そう言っていただけると本当嬉しい限りです(；＿；)シーズン始まってオータムクラシックを終えここからだなぁと楽しみです♪更新も近々したいなと思っているのでよろしくお願いします(´>_<`) (2015年10月21日 21時) (
レス) id: 69df3ca31c (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - はなこさん初めまして。書かれるお話がどれもツボで、何気にその時の結弦くんとリンクもしているお話も多くていつもドキドキニヤニヤwしながら読ませていただいてます！シーズンが始まりワクワクするプログラムで幸せを感じてます！またお話楽しみにしてます（＾ν＾） (2015年10月21日 18時) (レス) id: d42f8a3817 (このIDを非表示/違反報告)
はなこ(プロフ) - ゆったんさん» いつもありがとうございます♪少しでも癒しになったならそれは嬉しいです！色々と大変なこともあるかもしれませんが、無理なさらずに(>_<) (2015年9月13日 0時) (レス) id: 69df3ca31c (このIDを非表示/違反報告)
ゆったん - はぁ〜、今回の話、すごく癒されました！最近あまりいいことがなかったので、優しく諭されているような気分になりました。ありがとうございます！次も楽しみにしてます (2015年9月10日 23時) (レス) id: 56a839c14f (このIDを非表示/違反報告)
はなこ(プロフ) - りまさん» りまさん、コメントありがとうございます！お優しいお言葉までかけていだき本当ありがたい限りです(；＿；)そうなんですよね〜！こんな風に甘やかされたい。。(笑) (2015年9月7日 0時) (レス) id: 69df3ca31c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はなこ | 作成日時：2015年5月25日 23時
