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「あ、Aヒョン」
宿舎のリビングに行くと、Aヒョンが座っている頭が見えた。声をかけても返事がないから、近寄って顔を覗き込むと、スヤスヤ寝ていた。
「Aヒョン、起きて。風邪引くよ」
肩を揺らすと、Aヒョンはゆっくりと瞼をあげた。
「…ジソン?」
「うん。寝るならベッドでちゃんと寝ないと」
「…ん〜」
Aヒョンは目を擦ると、目の前に広げていたPCと資料を一瞥した。
「…これやらないと…」
「眠いんでしょ?今は寝て、明日やりなよ」
「あー」
Aヒョンはゆっくりと俺を見て、言った。
「ジソンア、久しぶりに一緒に寝るか〜?」
「…えっ」
そういえば、一緒に寝るなんて久しぶりかも。
「なんだよ〜、いやなのか〜」
「い、いや!寝る!一緒に寝る!!」
Aヒョンは眠いのか、かなりぽやぽやしている。ヒョンが拗ねて一緒に寝ないなんて言い出す前に、慌てて返事した。
俺は眠そうなヒョンを担ぐように自分のベッドに連れていった。
ヒョンは、ベッドに転がると、俺に向かって手を伸ばした。
俺もベッドに潜り込み、ヒョンに抱きついた。
暫くその体制でいたけど、少したっても眠れなかったから、小声でヒョンに声をかけてみた。
「…あのさ、Aヒョン」
「ん〜?」
Aヒョンは、起きていたみたいで、返事が返ってきた。
「Aヒョンは、夢とかないの?」
「うーん。スキズのマネになる前は、ライブカメラマンになりたかったかな」
「…ライブカメラマン?」
「そうそう。ステージでパフォーマンスしてるアーティスト撮るの。これでも実家にはカメラ結構あるんだぜ」
その話を聞いて、すごく心がざわついた。
「その夢は、諦めたの?」
「え?」
「俺がずっと傍にいてって言ったから…?」
Aヒョンは、さっきまで眠そうだったのに、今は真っ直ぐに俺の目を見ている。
自分の言い方がずるいのはちゃんとわかっている。Aヒョンは、絶対に優しい言葉をかけてくれる。
わかってるけど、今だけは、どうしてもAヒョンに優しくしてもらいたかった。
「うーん、諦めたっていうか…」
Aヒョンは、言葉を選んでいるようだった。
「なんだろう。見つけちゃった感じかなぁ」
「何を?」
「自分の毛布ってやつ?」
「え?」
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作者名:羊 | 作成日時:2023年8月26日 11時