宿舎にて ページ2
FL side
一番の幸せって、与えることなのかもしれない。
夜に水をのみにリビングに行ったら、たまたまAヒョンが宿舎に帰ってきた。
Aヒョンの部屋は3rachaとヒョンジニのほうの宿舎だけど、Aヒョンは必ず週2回か3回はこっちに来て様子を見に来てくれる。
最初に部屋割りが決まったときはAヒョンが向こうだと知って残念だったけど、Aヒョンもなかなかの夜更かし組だし、こっちの宿舎には最高権力者であり健康人間のリノヒョンがいるから、大丈夫だろうって理由を聞いて、納得してしまった。
それでも、やっぱりAヒョンは僕たちのことも気になるみたいで、頻繁に気にかけてもらえるのは少し嬉しい。
「おおー、ヨンボガ〜、おつかれ〜」
Aヒョンはふにゃっと笑って手を上げた。だけど、その姿は本当にちょっと疲れてるみたいで。
「おつかれさま…Aヒョン、ごはん食べた？」
Aヒョンはチャニヒョンみたいに、たまにごはんのことを疎かにする。
「…あ…」
やっぱり、食べていないようだ。
「僕が作るよ」
「え！ヨンボガ作ってくれるの！？」
Aヒョンは驚いたようだったけど、すぐに嬉しそうに笑った。
僕がキッチンに立つと、Aヒョンはついてきて、「なんか手伝うことある？」なんて聞いてきた。
「ないよ。今回は僕ひとりで作るの！」
だって、いつも忙しそうなAヒョンに恩返ししたいから。
でも、僕がそう言うと、Aヒョンは少し寂しそうな顔をした。
「そっか…リクスと一緒に料理…楽しそうだと思ったのに…」
そんなことを言うもんだから、僕が折れるしかなかった。
「…いいよ！じゃあ、これ切って」
僕は切ろうとしていたピーマンを差し出す。
途端に、Aヒョンは嬉しそうな顔で「はーい」と返事をした。
ああ、Aヒョンはいつもこうだな。
行動するのが好きで、何かをしてもらうよりしてあげるほうが好き。それでいて、誰かのためじゃなくて、ただしたいからするってだけなんだ。誰かが喜ぶ顔を見たい、自分のため。
だからこそ、Aヒョンに優しくされるのはすごく心地いい。
そんなAヒョンを一番喜ばせるのはいつだって自分でいたい。Aヒョンと一緒に過ごす優しい時間を一番感じるのは、自分でいたい。
なんだかエゴが入ってる気がするけど。
それでも、皆に大人気なAヒョンをこの瞬間だけは一人占めしていることに、幸せを感じるんだ。
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作者名：羊 | 作成日時：2023年8月26日 11時
