【牛I沢】君の声君の音‐another side

21 ページ21

結局キヨの家に入る直前まで持っててくれた。
そういう優しさ、触れたことないから、なんだか特別なのかな、とか思います、よ、って言えたらいいのに。


牛沢さんは、そんな私の気持ちなんてきっと何も知らなくて。
ばかみたいにインターホンを連打している。

キ「うっさい、うっさい、うっさい！！！！！！」
牛「…おめーのがうるせーよ」
キ「秋と哲もびっくりしてたから」


笑う顔が、ずるい。
私のときはそんな風に自然に笑わなかったじゃん。
やっぱり、まだまだ、近付けないんだなあ。


キ「あれ、てかAも一緒だったの？」


にやにやしてる。
あ、もしかして。
こうなるって察してたのか。
うわー、やなやつ。

貴「うん、たまたま会ったから一緒に来たの」
キ「とりあえず二人とも入りなよ。ん、荷物」
貴「え、ありがと」


キヨがさっと袋を持ってくれる。
…なんで、ふと優しさ出すの。
意外といいやつかよ。
今日も牛沢さん誘ってくれるし。




部屋に入れば、あっくんとてっちゃんがいて、なんだか少し落ち着く。



牛沢さんは、一番遠いとこ。
届かないなあ。


キヨの一声でゲームを始めるけど、牛沢さんとの距離に、少し不貞腐れる。
ばかみたい。
自分じゃ近寄れないくせして、近くに来てほしいなんて、ずるい。



キ「疲れたーーー。飯！酒！」



キヨのその声で、なぜかてっちゃんがキッチンに立ってくれる。
まー料理うまいからなあ。


簡単に少し作ってくれて、みんなでお酒を飲む。
牛沢さんに少しでも近付きたいとか、私にも笑ってほしいとか、そんなことばっか考えたら、かなり飲んでたようで。



気持ち悪くならなかったのはよかったけど、眠気に襲われる。
これ以上醜態さらせない、って、あっくんに眠いアピール。


秋「んー…帰る？」
貴「あっくん車ー？」
秋「ん」
貴「へへ、帰ろっかー」
秋「はいはい」


そっか、車取りにいってたっけ。
もう、無理、眠い、帰りたい。


てっちゃんとキヨの笑い声。
何て言ってるか聞き取れないや。


秋「おい、行くぞ」
貴「んー、抱っこ」
秋「お前調子乗りすぎ」



そんなこと言いながら抱き上げてくれるあっくん。
へへ、優しいなあ。


あれ。
悲しそうな顔してる。
牛沢さん？
なんで、そんな顔するの？



わかんないまま、気付けば目を閉じていて。

22→←20

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す